小人とは何ぞや?
〜「イメージシンボル事典」(大修館書店)より〜


冒頭で「小人」=「小さい人」と書きましたけど、世の中にはいろんな小人さんがいらっしゃいますよね。
沖縄にはキジムナーがいますけど、あれは小人に入るんでしょうか。子どもの妖怪だから、小人にはならないのかな。 小人のサイズというと一番に思い出すのは「ガリバー旅行記」の小人の国。あれは手のひらに載るサイズの 小人で、そういうイメージがこびりついているのですが、そうすると妖精も小人なんでしょうか。もとい、 小人が妖精の一種??
…などとぐるぐる考えております。そこで手元にある「イメージ・シンボル事典」(著)アト・ド・フリース、 (発行)大修館書店をひいてみることにしました。

まずは単純に巻末の訳語索引から「小人」を探す。
…お、あった。「小人=dwarf」の項が。 dwarf…ドワーフ?
聞いたことある!(笑)とあわててページをめくる。すると
 dwarf 小人
   「小人」は2通りに分けて考える必要がある。1つは、普通の背丈の人々が住む社会の
   中での背の低い人。もう1つは、小人国に住む小人達である。(強調筆者)
これよこれ!と、ちょっと嬉しかったり(笑)
さらに読み続けていくと、以下のような記述が。
   …(前略)…
   小妖精とか妖精などの姿でさまざまに描かれている小人国が描かれている小人国が存在
   していると信じられているのは、背の高い侵略者によって征服された背の低い牧畜民族
   がいたことに由来するかもしれない(そして誇張を好む人間の性癖がそこから伝説を
   作りあげる)。…(中略)…また一方、それは、すばしこくてほんの一瞬しか姿を
   見せず、森の中や、地下界の山のほら穴に住み、ひそかにその(妖精)家畜を隠して
   いるとみられる人々に対し、侵略者達が恐れを抱いたためかも知れない。
   すなわち異常なこと、予期せぬこと、予測を許さぬこと(つまり超自然的な力を所有し
   ていること)への恐怖の現れである。…(後略)…(強調筆者)
なるほど。また、続いて次のような記述も。
   …(前略)…
   彼らは(金銀を所有しながら、鉄をもたなかったアメリカ・インディアンのように)
   無限の富を所有していると信じられてきた。またすぐれた知識をもち(アステカ人の
   暦は侵略者のものよりもすぐれていた)、姿を消すこともできると思われてきた。
   …(後略)…
小人が賢くていろんな知識を持っているっていうイメージはありますね。
続けて記述は始めに出た、「背の低い人」についての記述があり、そして後半にまたいろいろな神話における 小人について書かれてあります。
   北欧神話における小人
   地下に住むドカルファル(黒い妖精)は、…(中略)…その外貌は、黒い皮膚、大きな
   頭、緑眼、短脚、カラス足である。胎児のような姿は、人間らしい感受性をもつにいたらず、
   人間以前の段階にいると思わせた。彼らは工匠としては無比だった。…(中略)…
   また、彼らは日中外へ出ると、罰として石に姿を変えられた。…(中略)…彼らを喜ばせる
   ものには寛大だが、彼らを怒らせるものには復讐心を燃やし、意地悪をする。あるいは
   (子供っぽい性格のために)いたずらをするにとどめる。…(後略)…

   ブラウニー(スコットランド伝説)は、人家に住みつき、役立ち、いつもは垂木に寝泊まり
   していた。彼らはガチョウの足をしていて、それを長い外套で隠していた。…(後略)…

   「叩く小人」Knocker(コーンウォル、スタッフォードシャー)。炭坑の深い坑道で
   叩く音が聞こえることがあり、食べ物をやるととまる。彼らに好奇心をもちすぎると
   仕返しされ、災難にあう。
いろんな小人がいるんですねー…。 この「ドワーフ」の項の最後には参考となる項目として、上にあげたものの他に「fairy」 「elf」「pigmy」「witch」「gnome」をあげていました。
そこでどう違うのかとこれらもひいてみますと、まず「fairy」と「elf」では、
「fairy」は「妖精」、「elf」は「小妖精」と記載されていました。
「小妖精」…「elf」はむしろ「dwarf」で記述されたものに近く、
   永遠の老人で(おそらく背の低い被征服民族の生き残りであろう)食物をとらず、
   粗末な家に住んでいる
と記述される白い小妖精や
   醜い妖精で(→dwarf)、暗い谷間や埋葬地や墓地に住む。とくに人間の子供を
   気まぐれに盗み、醜い子(「神かくしの子」)にとりかえる。
と記述される黒い小妖精に分けられています。
しかし醜い妖精がこの書における「小人」である「dwarf」に関連づけられている?
それはひとまずおいて、もう一方の「fairy」の項はずっと長く、その項の冒頭には
   妖精、小妖精、小鬼、小人などの区別は厳密にはできない。
としっかり明記されてあります。
それを強いて分けようとして、
   妖精fairyは他の小人とは違い女性とみなされることが多いが、そのため魔女の
   直系の祖先と思われている。大きい人が自分達の世界に入り込むのを極度に嫌い妬む
   ために、ときおり意地悪をする(→dwarf)。鉄、鋼鉄を恐れる(→witch)。
という記述もあります。しかしこれだと、どうやら小人dwarfは妖精fairyの一種で 人間に対して敵意を持って意地悪をするもの、と読めますね。 ちなみにpigmyはここではピグミー、小人族と訳され
   背の高さ1フィート、卵の殻で家を作り、旅するときはシャコに引かせた車に乗り、
   あるいは仔ヤギや雄ヒツジの背に乗っていく。
という記述があります。
さらにwitchは魔女であり、この項では既に小人のイメージは残っていません。 小人も持っているような魔法の力は持っていますが、特にサイズが小さいわけではなく、 これはとりあえず「小人」のイメージからは外して考えていいかと独断します。
すると次に見るのはgnome。これは地の精、小鬼と訳されていて
   1、坑夫と考えられていた。2、人を不機嫌にさせ、四大の地に影響力がある。
   3、白魔術で小鬼のゴブ王は魔法の力で命令を下す。
と記述されています。
さらにここからgoblinをたどるとこれは悪鬼と訳されており
   1,ほら穴や木立に住む。2,幼い子供を食べ、一般に邪悪である。…(以下略)
という、かなりダークな性質のものになっていきます。
また、Hobgoblinという小妖精も項目にあり、これは
   dwarf、goblinなどと同じ、一般的な象徴的意味を持つ。…(中略)…
   暗い物陰に隠れ、子供を驚かすことがしばしばある。一般に親切だが、いたずらも
   する。シェイクスピアでは、パックpuckやロビン・グッドフェローRobin
   goodfellowがこれにあたる(「夏の夜の夢」「ウィンザーの陽気な
   女房たち」)
なるほど!そういえばパックの絵というと、小さくて3歳児くらいから大きくて 10歳くらいまでの子供の姿で描かれることが多いような気が。
すると、ここで沖縄のキジムナーも連想してしまいます。子供の姿で、親切なこともあるが いたずらもする、というあたりが…

そこで、ここでかなり無理矢理にまとめてみますと。
小人という定義には、大きさに幅がある
ガリバー旅行記に出てくるリリパット国民のように手の平に乗るような小さな人から、 人間の子供、つまりは約1メートルくらいまでの身長を持つ人があるようです。
そして、人目を避ける生活をしている
森の中やほら穴、地下など、隠れた自然の中に住んでいる小人が多いようです。少なくとも、 豪華な生活はしていないようです。そのわりに(いや、そのせいなのか)、豊かな知識や 財宝のありかを知っているという噂も。
しかし、同族での社会生活を持っている
小人国があるくらいですもんね。
さらに、気まぐれな性格
子供を取って食うという悪鬼goblinを除けば、どの小人たちも、完全に人間の味方 というわけでもなく、また初めから敵というわけでもない。
しかしこれは、彼らが彼ら自信の社会生活を持っているとすれば、彼らはその生活に応じた 論理に従って行動しているだけであって、人間を基準に考えるものではない、とも言えます。

以上、「イメージ・シンボル事典」(著)アト・ド・フリース、 (発行)大修館書店を引用しながらの勝手気ままな独り言でした。
もちろん、ここに引用しなかった部分もたくさんあり、それらみんな面白く興味深い事ばかり です。興味のある方は一度、図書館などで探してみてください。おすすめです。



一般に「こびと(小人)」という言葉は、差別用語として使われた過去を持っていますが、
このホームページ上の「こびと(小人)」という言葉は一寸法師やコロボックルといった想像上の存在を
指すものとして限定しています。日常生活上で「こびと(小人)」という言葉を使う時には、その旨ご留意 くださいませ。