雑読本の部屋
BOOK REVIEW
★特にテーマを決めずに読んだ本の感想・紹介です。★
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作品名五十音順
ア行 「アイスクリン強し」
カ行
サ行 「シノダ!魔物の森のふしぎな夜」
タ行
ナ行
ハ行
マ行 「弥勒の月」
ヤ行
ラ行
ワ行



「アイスクリン強し」(著:畠中恵/発行:講談社)

 「しゃばけ」の畠中さんが描く明治の青春群像コメディ+お菓子つき。
 舞台は築地居留地、主人公は居留地で育った若き西洋菓子職人、真次郎。その友人は元徳川旗本の後継でありながら明治維新で禄を失い、今は警官として働く通称「若様組」の青年たち、そして一代で財を築いた小泉商会のひとり娘、沙羅。これだけ魅力的な舞台と人物と、おまけにアイスクリン、ゼリケーキ、ビスキットといった 日本に入りたての西洋菓子というすてきな小道具までついてくるのに面白くないはずがありません。内容もお菓子のようにするすると読めました。深く読めば、戦争に向ってゆく日本の足音や、解消されない貧困と差別など暗い影もあるのですが、主人公たちの、未来に明るさだけを見つめているすがすがしさ、まぶしさが、読後感をとても清涼なものにしていました。
 一番好きな話は「チヨコレイト甘し」かな。お菓子がふんだんに登場して、たいへん美味しゅうございました。(^o^)/(2009.7.28)

「アカネヒメ物語 オルゴールのひみつ」(著:村山早紀/発行:岩崎書店)

 何と言っても、挿絵が可愛い。この本はこの挿絵なくしてはこの話たりえないと言っても過言ではない(ほぼ全ページに挿絵が入ってるし)。お話も、公園の桜の木を依りしろに五百年この町を守っている女の子の神さま「アカネヒメ」と、その姿をただ一人見ることのできる人間の少女「はるひ」のコンビが、また、いい。「アカネヒメ」は神さまらしく(?)ちょっと強引で、偉そうで、でも女の子っぽいわがままや、涙もろくて優しいところもあって、時々ムッとすることもあるけれど愛さずにはいられない、という点を存分に発揮している。「はるひ」のほうは平凡なんだけど、そんなアカネヒメを自然に受け止めてしまえるという自分では自覚していない度量の広さというか、馴染みやすさがあって、行動力も凄い。
 …と並べてみると、この二人は「女の子が友達にしたいような女の子」の典型なのかも知れない。第1巻である「オルゴールのひみつ」ではこんな二人が出会って、二人で(…というか、はるひがアカネヒメに引きずられて)町の中を夜、走る女の子の幽霊を何とか成仏させようとする。ラストシーンがとてもきれい。この場面の挿絵はカラーで見たいぞ。(2002.8.5)

「アカネヒメ物語 夢みる木馬」(著:村山早紀/発行:岩崎書店)

 第2巻。クリスマスの話。冒頭に出てくる「ぶ厚くて高くてすごい人気のファンタジーの本」が「ハリー・ポッター」に思えるのは私だけ?(笑)。この冒頭の女の子の静かなケンカのシーンが凄くリアルで、「ああ、そういえばこういう事ってあったなあ」と思わず自分を振り返ってしまった…(苦笑)そうなのよ、おとなしい子のケンカってこういうふうに進展するのよ…(笑)凄いや村山さん。
 この「夢みる木馬」には、このハリポタを思わせる本のほかにも、2001年9月のアメリカテロ事件を思わせる「外国であったひどい事件」で大事な人を失ったおじいさんが出てくる(この本の発行日は2001年12月)。この物語に登場する青空画家の青空さんのように『この世のなかには神さまなんかいないんだ』と、多くの人が思っていたであろうこの年のこの時期に、この本を書いた村山さんの想いがせつなくて、痛い。と、同時に、児童書作家はやはり凄い、と思ってしまう。大人たちが、やれ政治だの、教育だのと子供本人をそっちのけにして騒いでいる間に、作家は、大人同様に残酷で容赦のない社会に置かれている子供ひとりひとりに、本を通して直接メッセージを渡してしまうのだ。あざやか、だよなあ…。(2002.8.5)

「アカネヒメ物語 たそがれの約束」(著:村山早紀/発行:岩崎書店)

 児童書の中にもパソコンが登場し始めて長くなりますが、今回は、はるひがパソコンを通じてパラレルワールドと交信する話。メールテストのために自分宛にメール送信するというのはよくやりますが、もしそれが、もう一つの世界の自分に届いていたら…そして、そのもう一人の自分から、やはり同じアドレスの自分にメールが届いたら…という発想が凄く面白い。
 (このパラレルワールドを扱ったものといえばダイアナ・ウィン・ジョーンズの「クレストマンシー」シリーズですが、この設定はまったく一緒。というか、パラレルワールドに関する常識的設定なのだね。)
 その中で去った戦争が大きなキーワードになる。私自身、父親が戦争で友人を多くなくしているので、けっこう他人事ではなかった。父の身代わりのように亡くなった、(当時子供の)友人たちがたくさんいる。もし彼らが生きていて、代わりに父が死んでいたら、今の私はここにいなかったわけだ。そういうパラレルワールドは本当にあるかも知れない。そういう考えはひとを慰めるけれど、せつない事に変わりは無い。決して会えないのは同じことだから。そういう人と、本当に一緒にいるためにはどうしたらいいか、ということを、1年に1回しか会えない七夕の彦星と織姫にひっかける終わり方がすごくすてき。そういえば、この本も7月に発行されているのだ…ディテール細かいな〜。(2002.8.5)

「あかんべえ」(著:宮部みゆき/発行:PHP研究所)

おりんはそうっと下から投げあげるようにして呼びかけた。
「お侍さま、お化けですか?」
「うん」と、階段に腰かけた人は言った。
「よくわかるね。感心、感心」
 なんだか気楽そうなお化けである。  (P74より)


 ↑こういう話です。(終わらせるな)
『恐くて、面白くて、可愛くて』というオビの紹介はほぼ合ってますね〜。クライマックスも切なくて、ちょっと泣いてしまいました。でも悲しい終わり方じゃないの。
 主人公は十二歳の女の子。その子が幽霊を見る力を持っていて、家が料理屋で、ちょっとコメディっぽくて…というと同じく宮部さんの「霊験お初」シリーズを思いだしますが、こちらは、あれよりややファンタジー色が強く、ほのぼのしています(お初ちゃんシリーズもほのぼのしてますけどね)。利発で勇気のある女の子が活躍する話が好きな方はぜひどうぞ♪♪楽しめますよ〜。
 私は玄さんとおみつさんのカッコよさに参りました(^^)(2002.4.6)

「アースヘイヴン物語 ナタリーと魔法の呪文」<原題:Spellfall>(著:キャサリン・ロバーツ/発行:角川書店)
 面白かったぁぁ!あまりにも独特な世界観に最初の3章くらいは読むのが辛かったんですが、それを過ぎたら後はもう勢い!キャサリン・ロバーツの新刊というだけであらすじを読まずに読み始めたのが良かったのかも知れない。ので、感想でもあらすじは書きません(笑)。訳文も良かったな。「スペル」を安直に「呪文」と訳さず、あえてカタカナ使いにした判断は賢明だと思う。たぶんこの物語における「スペル」っていうのは、「呪文」でもあるけど、他の意味も感じさせる存在だから。
 前作「ライアルと5つの魔法の歌」と違って、実際に私たちが住む現実世界からの始まりなので、余計にロバーツ独特の世界が際立っていたところもありました。最後に現実世界の警察が出てくるあたりが凄いなあと。ファンタジーのごたごたを現実世界に持ち込む展開って、たいてい現実世界では辻褄があわずに迷宮入り、で済ませてしまうことが多いじゃないですか(「●ファイル」みたいに。笑)。それが違っているところがまた良かった。続き…あるのかな?(2002.6.30)

「アナトール、草の王さまの島へ」<原題:The Island of the Grass King>(著:ナンシー・ウィラード/訳:田中明子/発行:佑学社)
 アナトール三部作の二作目。でも一作目も三作目も翻訳されてません(苦笑)。今のファンタジーブームからは考えられないですが、80年代の翻訳ファンタジーってこういう扱いでしたよね…(遠い目)。児童書ならなおさらに。
 「指輪物語」共著者の田中明子さんの翻訳です。おばあちゃんのぜんそくに効くウイキョウを手に入れるため、あらしばあさんの庭にむかうアナトールの旅の物語。虹のてっぺんに住む天馬、しゃべる猫と銀のコーヒーポット、道を売る道守り(みちもり)、黄金の木に閉じこめられた王と王妃、金の笛の心臓を持つガラスでできた女の子…なんというか、ルイス・キャロルとマクドナルドを足して割ったような不思議な世界です。(2008.4.6)

「雨更紗」(著:長野まゆみ/発行:河出書房新社)
 うーん…不思議な作品でした。オチもなかったし(爆)。なんというか、あまり物語にめりはりを求めずに、何が虚で実か分からない曖昧なところを楽しむ作品ですね。正直途中で頭が混乱しそうになりましたが、これはこういう作品だと思ってしまえば、なかなか印象に残る作品です。そもそも、難しい手法だと思いますしね。二重人格の一人称っていうのは…。(2004.10.10)

「R.P.G」(著:宮部みゆき/発行:集英社<文庫>)
 事件はある中年男性が他殺体で発見された所から始まる。どうやら事件はその3日前に殺された女性の事件とも関連があるらしい。一方、被害者の男性はネット上で見知らぬ他人と疑似家族を作っており、どうやら彼ら顔の見えない偽の家族とも事件は関係しているらしい…
…と、そこまでしか説明できない(笑)長編「模倣犯」後の新作、しかも初の文庫書き下ろしということで一時かなり話題になりましたが、模倣犯とはまったくテイストの違う話なので、あれと同程度の社会派ミステリを期待してはいけません。かえって期待しない方が面白いです(笑)!←いや本当に。私はまったく期待せずに長めの短編、といった軽い感じで読んでいたので、最後でまんまと作者の罠に引っかかり、眠れなくなる羽目に陥ったのでありました(た、単純過ぎる)。(2001.10.11)

「安房直子コレクション1 なくしてしまった魔法の時間」(著:安房直子/発行:偕成社)
<収録作品>「さんしょっ子」「きつねの窓」「空色のゆりいす」 「鳥」「夕陽の国」「だれも知らない時間」「雪窓」「てまり」「赤いばらの橋」「小さいやさしい右手」「北風のわすれたハンカチ」
 待ってましたの安房さん全集。この第一巻に収録されている作品は半分くらい読んだことがある…が、けっこう読んだことがないものがあったので、そっちのほうが驚きだった。安房さんは(90年代のものは除いて)ほとんど追っかけてたような気がしたので。それほどでもなかったということかちら…。

 特に「空色のゆりいす」は忘れられない作品です。中学生くらいの時にこのお話をはじめて読んだ時、もし私が作家で、こんなお話をかけたなら、もういつ死んでもいいと思うだろうな、と思うくらい感動したものでした(変な感動のしかただけど…)。今でも「純愛」という言葉を聞くと、このお話を思いだします。(2004.5.16)

「家の中では、とばないで!」<原題:NO FLYING IN THE HOUSE>(著:ベティー・ブロック/訳:原みち子/発行:徳間書店)
「人の言葉を喋る体長10cmほどの小さな犬」というキャラクターがいることを知って興味を引かれて読んでみました。孤児のわりにのんびりしている少女アナベルの性格もあって、はじめは単なるほのぼのファンタジーかしら?と思って読んでいたのですが、「アリス」のチェシャ猫を思わせるミステリアスな猫の登場にして次第に不思議な展開に。そして一気に展開した最後でのアナベルの選択には、不覚にも涙してしまいました。タイトルから見るとよくありがちな「魔法肯定系物語」に見えますが、実はどうしてどうして、深く愛情に満ちたテーマが隠されています。物語の料理如何では人間界と妖精界の両方を揺るがせるスペクタクルファンタジーにもできそうなものを、あえて「どこかの古い町角で起きて・終わったささやかな物語」に仕上げている手腕にむしろ脱帽。いいな、こういうの…。
 原作発表は1970年。日本で1981年に刊行されたものの復刊本です。(2002.11.16)

「イギリスはおいしい」(著:林望/発行:)
実は初めて読みましたー。有名どころなのに。
タイトルから見て、「イギリスのご飯はまずい」という定説に「いや美味しいんだぞ!」という内容かと思いきや、やっぱりマズイ話が多いのはどういうことだ(笑)。でも、食べたことのないメニューの話も多かったけど、「分かる分かる!」と笑ってしまった所も多かったですね。とにかく野菜はゆでて終わりとか。私はイギリスで卓上に塩・コショウ入れがある理由を思い知りましたよ。あの「塩・コショウ入れ」って可愛いデザインが多くて、こういうのが卓上にあるのってステキ♪と、イギリスに行く前は思ってたけど(今もちょっと思うけど)、きちんと調理の時点で美味しく味付けできる日本にあれは必要ないんだよね…。

でも、「おいしい」話とかもちゃんとあって、それはとっても懐かしかったです。本当に美味しいのか、周りがマズイから美味しく思えるのか、とはあえて追求したくない謎ですが(笑)、唾がわきましたね。特にりんご、コックスの話とか!
すばらしく美味しそうに書かれてるってのもあるけど、思い出しちゃって。日本では手に入らないこともあってとっても食べたくなっちゃいました。ああ、食べたい。どうしてあのりんごは日本にないんだろう。確かにそれほど甘くないけど、すっぱみもあるけど、食べきりサイズで美味しいんだよね〜。(2005.5.8)

「イギリスは愉快だ」(著:林望/発行:文藝春秋<文春文庫>)
「イギリスはおいしい」に続くイギリスエッセイ第2弾。…ということですが、こちらを先に読みました。
この巻では、著者が一時ステイしていたという、ルーシー・マリア・ボストン夫人について多く語られています。実は私、こんなサイトを作っているくせにまだ「グリーン・ノウ」シリーズを読んだことがなくて(恥)、でもボストン夫人については、梨木さんのエッセイ「春になったら苺を摘みに」の中でも出てきていたので印象に残っていたのです。あの、黒いリスのことが、この「イギリスは愉快だ」にも出てきていて、びっくりしました。なんだか、作品より先に作者の面影を見たような気がして、近いうちに作品も読んでみたくなっています。
閑話休題。
…で、そのボストン夫人のマナーハウスでの思い出はすごく優雅で、なかなか今時あちらにステイしたからといって簡単に経験できるようなものではない生活の一部が書かれていて、面白かったです。

他に…といえば、「ロンドンの哀しさ」の章の映画のようなラストシーンが印象に残っています。でも、あんまり繰り返し読みたくない章だな。哀しすぎて。その後にまた、「勇気とは何か」の章を読みたくなっちゃうな。第4章「勇気とは何か」は、この本で一番好き。ひったくりをやっつけた車椅子のお婆さんの話は、私も聞いたことがありますよ。ああいう、大声を張り上げて主張するわけじゃないけど、頑固に考え方を変えないやり方は、とても大好きだ!(2005.5.8)

「イサナと不知火のきみ」(著:たつみや章/発行:講談社)
 海を舞台にした、古代日本…をモチーフにしたファンタジー、のようです。主人公が13歳の男まさりの少女、という設定はありきたりですが、話はまあまあでした。正直、「裔を継ぐ者」のほうが面白かったと思うけど、新シリーズの一作目らしいので、今後に期待しておきます。しかし、やや美男美女が出すぎているのが気になる。この人の作品で美男美女が出てくると、いきなり冷めるのは何故だろう…本当に。けもの・ばけものを描くのも上手なんだから、そっちの方で頑張って!と思うのは個人的嗜好なんでしょうか(笑)。(2008.11.12)

「いとしのドリー」(著:風野潮/発行:岩崎書店)
 ある日突然、死んだ父さんの携帯電話が鳴った。出てみると、それは10年前に親に勘当されたきり日本から出ていったきりの、もちろん会ったことも話に聞いたこともないおじさんだと名乗った。会いに行ってみると、そのおじさんの傍らにはこれも一度も会ったことも、見た事もないような美少女が立っていた……。
 という、かなり印象的な導入部分の、テーマが重いわりにはさらっと読める児童小説。クローン人間をテーマにしていますが、どちらかというともっとアナログで基本的な、人間の歴史とか人の絆だとか、そういったものに重きを置いている感じがしました。作者は「ビート・キッズ」の作者で、確か生粋の関西人。大阪弁が生きてます(^^)(2003.3.14)

「ウサギの丘」<原題:RABBIT HILL>(著:ロバート=ローソン/訳:田中薫子/発行:フェリシモ出版)
動物が主人公の物語を読むと、生のニンジンとかキャベツとか麦穂とかがやたらと美味しそうな錯覚を覚えませんか。私は覚えます……。うう、美味しそう。エンドウのツルとレタスのスープ。南部風のフライドチキンっていうのもね、冷静に考えたらゴミ箱に捨てられている食べのこしのはずなんですが、スカンクやハイイロギツネの目から見るとああも美味しそうに見えるのか……。食べたいよ。(<待て)

人間が作る野菜畑を自分たちのものとして分け前まで決めてしまう動物たちの身勝手さには苦笑せざるを得ませんが、でも確かに動物たちって人間の作った畑なんざ格好のレストランくらいにしか思ってないんだろうなあ。ちうか、作者がひしひしとそう思っている感触が感じられてある意味痛々しいといえばそうかも(笑)。そう考えると、この物語は人間と動物の理想郷のお話といえますね。動物たちがこんなにかしこくて、かわいくて、そして人間たちがこんなに優しくて、無欲な存在なら、どんなにいいかなあ……。
 と、たそがれてみる事は別にして、楽しくてかわいいお話でした。絶妙に擬人化された動物たちが面白いです!

 挿絵も作者本人が描いています。どこかで見たことがあるなあと思ったかた、岩波書店の絵本「はなのすきなうし」の絵を描いた方ですよ〜(後書き読んでびっくり!)。絵からはじめて、後に物語も書くようになった方なんだそうです。この「ウサギの丘」でニューベリー賞を受賞。絵本製作のほうでもコルデコット賞を受賞しています。すごい、天は二物を与える人もいるのね(笑)。(2002.12.20)


「FBI心理分析官」<原題:WHOEVER FIGHTS MONSTERS>(著:ロバート・K・レスラー&トム・シャットマン/訳:相原真理子/発行:早川書房)
ええと(^^;このブックリストの中では異彩を放ってしまうでしょうが(苦笑)
 数年前のベストセラーです。その後古本屋で山ほど積んであるものを「読んでみっか」と買ってみたはいいものの、あまりにショッキングな内容に挫折してそのまま本棚で埃をかぶっておりました。
 最近、あまりにも本棚が一杯になったため「頑張って読んでみよう」と出版後8年目にして再度手に取ってみたところ……読めましたね。一晩で。
 なぜ二十歳前後の時に読めず、今読めたかということについて、読みながら思わず考えこんでしまいました(苦笑)。やっぱり、それだけ年をとったということなのかな。人間という生き物は、人間として育てられなければ人間性を備えた人間にはなれない、ということを、今の私は知っているけど、最初にこの本を手に取った時は知らなかったもんな。梨木香歩さんの「からくりからくさ」で、般若の面を見て怯える娘たちに、母親が「自分の中に確認できているものは恐くないのよ」と告げた場面を思い出してしまいました。年をとるって、不思議で奥深いものなんだなあ。普段はそんなに昔の自分と今の自分が変わっていないような気がするものだけど。

話が飛びました。

で、全編読んでみて、やっぱり読んでよかったと思いました。本当に自分と同じ人間が犯したとは信じがたいほどの残酷な猟奇事件を扱っていて、読んでいる間は明日から一人で外を歩けなくなるような恐怖感さえ感じるんですけど、読み終わった瞬間に感じるのは、それらの犯罪者に直接会い、研究しつつ、人間の命を守ろうと日夜頑張っている著者の力強い人間性なのです。殺人を犯すのは人間ですが、それを防ぐのもまた人間だということ。それを強く感じました。(2002.12.31)


「王の眼 第一巻」(著:江森備/発行:角川書店)
エジプト神話をモチーフに、古代エジプトを舞台として、二人の少年が王家の権力争いの核となっていく物語です。冒頭の王国地図を見て、よくもまあここまで古代エジプトの地名を探し出したな〜、と舌を巻きました。ひょっとしたらフィクションも混じっているのか?と疑うほどの緻密さです。最終巻に収録されるという参考文献一覧が楽しみ。
物語の内容は、『イシスとオシリス』のエジプト神話をご存じの方ならばピンと来る展開です。この神話を例にとって言えば、この物語は「ホルスの復讐物語」であり「成長物語」とも言えるかも。ただし、ホルスにあたる少年が二人いるので、この後の展開が楽しみなところですが。(2001.4.23)


「オオカミのあっかんべー きむらゆういちの絵本エッセイ1」(著:木村裕一/発行:ソニー・マガジンズ)
イラストはおなじみの、あべ弘士さん。表紙で「あっかんべー」をしているオオカミが可愛いです♪…はい、これは「あらしのよるに」シリーズの作者、きむらゆういちさんのエッセイです…が、中身は『あの』オオカミとヤギの対談風になっていて、なかなか読みやすかったです。立ち読みでも読破できるんじゃなかろうか(爆)。ちなみに私は約1時間で読み終えました。

でも、内容は期待したほどじゃなかったかな…。もっと面白いものかと思っていたんだけど、オオカミとヤギの目から見た人間社会という面白そうな設定の割には、出てくる意見がみんなどこかで聞いたようなものばかりで、ただ表現を変えて言ってみた、という感じ。でもまあ、それは私と木村さんの興味のアンテナがたまたま同じ方向に向かっていた部分がこの本に取り上げられたっていうだけで、次の本では違う方向になっているかもしれないし、普段こういうことに興味を持たない人になら目からウロコものかもしれません。でもやっぱり、もう少しテーマを掘り下げて、木村さんにしかできない個性的な意見を読んでみたかった、とは思いますけどね。 (2004.10.3)



「鬼の橋」(著:伊藤遊/発行:福音館書店)
「えんの松原」が出たので慌てて読みました。別に続き物ではないようですが。
これが中学の課題図書…。これをすべての中学生に読めと言うのか…?それはちょっと無理かと…。 いえ、面白いんですが、これを読んで面白いと思うかどうかは、かなり読み手を選ぶのではないかと。 読み手を惹きつける筆致で、平安時代の持つ独特の闇の雰囲気や、思春期の主人公・小野篁の心の揺れなど良く描いていると思いますが、幸せな終わり方にも関わらず、読み終わった後に落ち込んだのは何故だ(苦笑)。
読んで損はないですが、興奮的感動は求めない方が良いでしょう。(2001.6.21)


「おそろし」(著:宮部みゆき/発行:角川書店)
 「三島屋変調百物語事始」という副題がついています。しかしこれ、続くのかなぁ…? どうもそんな気はしないのですが。
 目前で起きたひどい事件のために心を閉ざし、叔父の三島屋に預けられている女性「おちか」が出会う、不思議の数々。一見オムニバス形式のようになっていますが、最後にすべてつながりますので、後ろから先に読むのは危険です(笑)。

 なんというか、時代劇なんだけど、むしろ現代風刺のような…不思議な作品でした。いつもの宮部時代劇の雰囲気はじゅうぶんにあるんですけど、それで包んでいるものが現代的なような。加害者側の人間を主人公に据えているからでしょうか。「あなたは人でなしの味方ばかりしている」――それを否定できない、そんなおちかの心を指摘する『商人(あきんど)』の意図が定かでないだけに、それによって「商売している」という彼の言葉が不気味です。
 いや、なんか続きがありそうな気もしてきました。おちかと「商人」は、再びあいまみえる事があるのでしょうか。読んでいて爽快ではない作品ですが、恐いもの見たさ(それは、自分の心の闇を覗く、という意味合いでの恐さも含みつつ)――また読みたくなる、不思議な物語です。(2009.5.28)


「オーロラ交響曲の冬」(著:山口泉/発行:河出書房新社)
わりとストレートに日本内での差別問題や核による被害を描いた物語でした。私はストレートに過ぎる 表現は苦手なほうなんですが、これは結構素直に読めました。オリオン三重奏団とか、星(ホトホリ) 湖とか、宮沢賢治の世界を彷彿とさせる舞台設定と、韓国音楽のリズムが 以前から好きだったからかも知れません。(2000.12.14)


「カイン 自分の「弱さ」に悩むきみへ」(著:中島義道/発行:新潮社〔新潮文庫〕)
職場での対人関係に悩んでふらふらになっている時、ふらりと入った本屋さんの店頭で平積みになっていたので見てみたら、結構読みやすそうな語り口(手紙形式)だったし、山田詠美さんの解説も面白かったので買ってみた一冊です。

実際に呼んでみたら対人関係にはあまり関係のない内容で本来の目的とは外れてしまったのですが、哲学者中島さんの壮絶な克己人生(と書いていいんだろうか?)に圧倒されました。たぶん私はここまで偏屈にはなれないなあ…と思いますが、こういう生き方があると知っておくことは、ある意味人生の命綱になりうるかもしれない、とも思いました。ここまで壮絶な状況ではないにせよ、私も決してマジョリティの中のマジョリティというわけではないしね…。(2005.10.2)


「かしこいブタのロリポップ」<原題:Lady Lollipop>(著:ディック・キング=スミス/訳:もりうちすみこ/発行:アリス館)
自分がキャラクターとしてのブタ好きであることを確信しました(^^;かわいいよブタ!!や、このタイトルとこの挿画にくらくらきてしまう方はきっとお仲間かと(笑)。
話は、王さまと王妃さま夫妻にさんざん甘やかされて育ったお姫さまがブタのロリポップ飼いたさに…って説明したら話が終わっちゃう。さらっと読める短い話なので、ちょっと一息つきたい時にでもどうぞ。ロリポップが次第に周りの人間の心をつかんでいくさまがとても愛らしいです。ホント、こんなブタなら一家に一匹欲しいわ。(2002.12.8)


「ガセネッタ&シモネッタ」(著・米原万里/発行・文芸春秋社)
ロシア語同時通訳者の著者が語る、真面目な国際会議のあんなネタこんなネタ。同時通訳という 仕事に対するウロコ目から落ちまくりでした。抱腹絶倒に笑えるので、家に誰もいない時に読む ことをオススメします(笑)。(2001.2.8)


「カナリーズ・ソング」<原題:Black-Eyed Susan>(著:ジェニファー・アームストロング/訳:金原瑞人・石田文子/発行:金の星社)
 きれいな装丁と変わったフォントに惹かれて読んでみました、今年の課題図書のひとつです。舞台はアメリカ西部開拓時代。あの「大草原と小さな家」と(多分)同じ時代で、主人公のスーザン(愛称スージー)もローラやメアリーと同じように父さん母さんと3人で大草原に暮らしています。彼女が住んでいる芝土小屋っていうのは、多分「大草原シリーズ」の「プラム・クリークの土手で」(だったかな?)でローラ一家が住んでいた、土手に穴を掘って作ったような土の屋根の家と似たようなものではないでしょうか。あやふやですが。
 ともかくスージーはそこに住んでいて、彼女はこの大草原が大好きなわけです。でも彼女の母親は森や木のあふれるオハイオ州で大家族に囲まれて育った人なので、見渡す限り木の一本もない大草原で、ご近所さんもいない生活が寂しくて仕方が無い。だんだん家の中にひきこもって、心の病気になりかけています。
 父親は妻の様子を見て見ぬふりをしている。スージーはどうにかして母親を元の母親に戻したい。そんな彼女の、ある日の夜明けから次の日の朝までの話です。特に派手な展開があるわけでは無いんだけど、しみじみと良い話でした。(2002.6.14)


「吸血鬼伝説」(著:ジャン・マリニー/監修:池上俊一/発行:創元社〔『知の再発見』双書38〕)
 感想を一言で言えば「現代に生まれて良かった…」かな(笑)。現代で吸血鬼っていったら文学と伝説の世界の生き物ですけど、2、300年前は現実の生き物として恐れられていたんですね。しかも怖れられるだけあって、それなりに体系的な理由がある。そりゃ怖いでしょう。
 でもね、解説ではこれを「あまりにも厳しいキリスト教観点によって肉欲や死が禁じられた結果、死後も生きつづける死体といった肉体の復讐を受けた」みたいなことを書いてたんですが、正直これについては分からないです…。西洋じゃアジアほど死体や遺骨を貴重に考えないってことは聞いたことはありましたが。たとえば十数年前に起きた日航墜落事故で、外国人の被害者の遺族は、遺骨や遺体を家へ持って帰ったりする発想…つまり、日本人が考えるみたいに、遺体が家へ戻る=帰宅っていう発想はあまり無かったらしいですね。でも 遺体を丁重に扱ってもらったことについては感謝してたそうですし、うーん、どうなんだろう。死んだ後の肉体について、西洋の人々がどう考えているかとか、よく分からないです…。でもアジアでも死後生き返って化け物になる話とかってたくさんありますよね。あれはどう説明するんだろう。あまり安易に一元的な考えを受け止めないほうがいいような気もする。

 しかし、今では人間の体の大半が水でできていて、血液が酸素や栄養分を体に行き渡らせるために循環しているっていうのは常識なのに、そういったことが常識じゃなかった時代には、体の中を赤い液体が流れているってことはそんなに不思議で驚くべきことだったんだなあ。それがどうやって今のこの世の中になったかっていうと、そこにはやっぱり科学者や医学者、その他たくさんの人々が研究や証明によってこの世の蒙昧を晴らしたいと思い続けていたからなんでしょうね。(2004.10.31)


「京都人だけが食べている」(著:入江敦彦/発行:光文社〔知恵の森文庫〕)
京都の食べもの・約50種についてのエッセイ。ひとつの食べもの(飲物もあるが)について3〜4ページのエッセイになっているので読みやすく、食べものの写真もきれいです。たまたま京都に行く予定がある時に買って、この本にある食べもの・飲みものを探して京都を歩き回りました。
 書いている人が京都の人なので、観光名所やその近くにあるものばかりでなく、むしろ住宅地や問屋街などにあるお店が多くて、そういったお店を訪ねることで、その周りの、今まで知らなかった町を歩けて、それが楽しかったです。いただいたものには私の味覚には合わないものも、もちろん合うものもありましたが、お店を訪ねることそのものが楽しかったので満足。ちなみに、この本で知って訪ねて買ったもので一番アタリだったのは、「柳桜園」さんの「ほうじ茶」でした。ほんとに美味しくてびっくり!お店も骨董屋さんや今日の老舗が並ぶ落ち着いた商店街の一角で、あそこはまた訪ねてみたいです。(2006.3.8)


「銀座八丁目探偵社〜本好きにささげるこだわり調査隊〜」 (著:北尾トロ/発行:メディアファクトリー)
サラッと読み。網棚雑誌の行方を追跡したり、 児童書や翻訳に挑戦したり、古本屋やチリ紙交換をやってみたりと、本に関するアレコレを実際に やってみたレポート集みたいなもの。面白かったッス♪ちょっと参考になる所もあったしね。(2001.5.28)


「クマの名前は日曜日」<原題:EIN BAR NAMENS SONNTAG>(著:アクセル・ハッケ/訳:丘沢静也/絵:ミヒャエル・ゾーヴァ/発行:岩波書店)
私には小さな頃から持っているクマのぬいぐるみがある。このお話に出てくるような、抱きかかえて眠れるような大きなテディベアではないけれど、子どもの頃はどうしてこのぬいぐるみがこんなにいとおしいのか自分でも分からないほど、他のどんな人形よりもこのぬいぐるみが好きだった。縫い目が裂けて、中のビーズがこぼれ出した時は本当に悲しくて、もう古いから捨てたら、という親を説き伏せて繕ってもらったものだ。この本を読んでいて、そうした子どもの頃の気持ちを思い出した。

この本は、テディベア誕生から100年を記念して作られたもの。作者はアクセル・ハッケ、絵はミヒャエル・ゾーヴァ。このコンビの本には「ちいさなちいさな王様」というものもあるから、知っている人も 多いかもしれない。「ちいさなちいさな王様」は少し辛らつな小説だったが、この「クマの名前は日曜日」は、少年と彼のテディベアとの心の交流を描いた、不思議な雰囲気のものになっている。内容は、ある日自分のクマがただのぬいぐるみでしかないのではないか、と疑惑を抱いた少年が、夢の中でクマの国に行き、人形となってクマに買われていくというもの。こういう手法にはやはりどこか皮肉というか、ウィットに富んだものを感じるが、ラストはすてき。そう、他の人から見ればただの布と毛とビーズの固まりでしかなくても、ある人にとっては無くてはならない真の親友だといえるものだって、確かにあるのだ。(2002.10.31)


「くらのかみ」(著:小野不由美/発行:講談社)
 蔵の中の座敷童子だとか、行者殺しのたたり、井戸の中から出て釣瓶を鳴らす手、またその一方で財産を狙う見えない殺人犯など、読んでいるうちに、小野さんの旧作『悪夢の棲む家』だとか『屍鬼』とかを思い出しました。小野さんて、ホラーとミステリーが本当に好きなんだな〜、というのが読んでいて良くわかる作品です(笑)。

 でも登場人物がクリスティ並みですか?ってなくらいに多い&血縁関係が複雑で、しかもそれをよく飲み込まないままに物語の先を読むのに気を取られてしまったので、面白かったけど、なんだか物足りない……なにか読み落としているような気がする……というような読後感に終わってしまいました。しまった…。
 やっぱりミステリはきちんと「頭から」「人間関係をはっきりさせて」読まないといかんですね。そうやってたらもっと「うわー」ってな感じで読み終われたと思います。 特に「余分なひとり」、いわば物語の中のホラー部分の結末はぞくっとしました。ミステリ部分の解決は不完全燃焼だったけど…(^^;。(2004.3.2) 


「クリスマスのようせい(原題:The Fairy Doll)」(著:ルーマー・ゴッデン/訳:久慈美貴/発行:福武書店)
  四人兄妹の末っ子で、何をやっても失敗ばかりしているみそっかすの少女エリザベスがクリスマスに貰った、妖精の人形。それからというもの、エリザベスが失敗しそうになると妖精が助けてくれるようになって…、というお話。何をやってもうまくいかないエリザベスの心情が痛いです(泣)いわゆる成長物。人形と少女の心のふれあいを描いた、しっとりしたお話になっています。(2001.11.16)


「クロニクル千古の闇1 オオカミ族の少年」<原題:Chronicles of Ancient Darkness 1.Wolf Brother>(著:ミシェル・ペイヴァー/訳:さくまゆみこ/発行:評論社)
うーん、面白い…面白い*はず*なのに何故か作品世界に入り込めなかった…(後悔)。
人間が自然や精霊と共に暮らしていた時代、なぜか部族から離れて父親と二人だけで暮らしていた少年・トラクが、悪霊に乗り移られたクマに父を殺され、悪霊を封じ込める力を持つ「天地万物の精霊」が宿るとされる山を探して、途中で出会ったオオカミの子と旅をする話です。

「1」と銘打たれたタイトルのため、「続き物か?!」と気構えて読んでいたのが悪かったのか(実は一話完結ものでした)、それとも途中から旅の同行者となった少女レンの存在が、元来孤高の存在であるはずのトラクの孤独を薄めてしまったのがいけなかったのか、斜め読みに終わってしまいました。ちょっと悔しい。全6巻あるそうなので(主人公が変わるのかどうかは不明)、続巻の様子を見ながらまた読み直してみたいと思います。ちなみに作者はイギリス人で、私が2005年6月に渡英した際にちょうど出版されたばかりの2巻がどの書店の児童コーナーでも平積みになっていました。あちらではかなり力を入れて売り出しているシリーズのようです。
日本語版ではほとんど挿絵がなく、カバーイラストは酒井駒子さん。この選択はかなり好きです。(2005.10.1)


「小石通りのいとこたち1 ルーシーおばさんの台所(原題:IN AUNT LUCY'S KICHEN)」
「小石通りのいとこたち2 すもも通りの花屋さん(原題:A LITTLE SHOPPING)」(著:シンシア・ライラント/訳:市河紀子/発行:偕成社)

親同士がダンサーで、一年のワールド・ツアーに出ているため、小石通りに住むおばさんの家で一緒に暮らしているリリー、ロージー、テスの3人のいとこ同士の少女の生き生きとした生活を描いたシリーズ。5冊目まで出ているようです。
 性格は違うけれど気が合ういとこたちと、若くて優しいおばさんの家で過ごすなんてうらやましくも素敵な生活だなあ……と思いながら読みました。いとこやおじ・おばって、親兄弟とはまた違う少し離れた関係で良いですよね…。
 装丁が凝っていてとてもきれいです。文字の多い絵本のような雰囲気。(2002.12.25)


「五瓣の椿」(著:山本周五郎/発行:新潮文庫)
 ご多分に漏れず、NHKの金曜時代劇で放映中の作品。面白そうなのに、どうも舌足らずなドラマ内容に我慢できず原作に手を伸ばしてしまいました。罠にはまってますか私(笑)
 そして原作はと言えば…やっぱりドラマは作りが甘かった。想像どおりとはいえ、ここまで泣かされるとは思ってもいませんでした。 名前を変え、手練手管を使い、ここまでするかという徹底的なやり方で標的を追い詰めていく「おしの」の頭の良さに絶句すると同時に、その姿の痛々しさに胸が詰まりました。欲を言えば、沢田屋の東蔵とどんないきさつがあったのか、もっと詳しく読みたかったなあ…。 時代劇なのに時代劇とは思えない生々しさに脱帽。いや凄いです。(2001.12.15)


「コーンウォールの聖杯(原題:Over Sea, Under Stone」(著:スーザン・クーパー/訳:武内孝夫/発行:学習研究社)

「これはおまえたちの仕事だ。いつでもおまえたちだけで、道を発見しなくてはならない。わしは、おまえたちを守る役で、それ以上のことはしない。最後までおまえたちを守るが、さらにおまえたちといっしょになぞをといたり、おまえたちを手助けしたりはできないのだ」  (P216より)

 謎解きと探索、そして追跡劇の物語。得体の知れない強大な敵と、多くを知っているにも関わらず導くことはしない味方の間で、700年前の古地図を見つけた兄姉弟の三人が「古い世界の最後のあかしであり形見である」聖杯に似たカップを探し続けます。味方だと思っていた人がにっこり笑いながら裏切ったり、敵だと思っていた人がどうにも悪い人には思えなくなったり、読みながらハラハラして、不安でじたばたしたくなる…という経験を久しぶりにしました(笑)。
 舞台はあくまでも現代のイギリス、コーンウォール地方。ファンタジーというよりはサスペンス、児童書というには重厚な雰囲気をただよわせた物語ですが、それだけに途中でバーニイに起きる不思議な出来事、そして最後のメリイおじさんの「謎」に気づくシーンはとても印象的で、ぞくりとしました。この雰囲気にハマるかどうかが、この作品を好きになるかどうかの分かれ目…かも。
 ちなみに私はこの物語をベースに書かれたという「闇の戦い」シリーズ全4巻を読む気まんまんです(笑)。(2002.8.14)


「サラの旅路〜ヴィクトリア時代を生きたアフリカの王女〜」 <原題:At Her Majesty's Request>(著・ウォルター・ディーン・マイヤーズ/発行・小峰書店)
アフリカのある部族の王女として生まれながら、幼い頃に対立する部族に囚われ、殺される所をイギリス人に救われ、ヴィクトリア女王の庇護を受けて生きた一人の黒人女性、サラ・フォーブス・ボネッタの一生を追ったノンフィクションです。こんなドラマティックな、そして孤独な女性がいたとは知りませんでした。もっと本やマスコミで研究されても不思議はないと思うのですが。(2001.4.4)


「シノダ! チビ竜と魔法の実」(著:富安陽子/発行:偕成社)
 人間のパパとキツネ(!)のママを持つ3人の子ども達の冒険物語。〜〜なーんて、読書意欲をそそる設定じゃないですか〜!
――で、期待を裏切らず面白かったです。とにかく登場人(狐?)物がおもしろ素晴らしすぎ!
「災い!災い!災いがやってくるよ!」という声と共に現れる、悪い予言しかしないホギばあさん。人間社会が嫌いなくせに時代劇が好きで、テレビを見にやってくる鬼丸おじいちゃん。ホラばかり吹いてはトラブルを持ち込む夜叉丸おじさん(ここまでキツネ一族。つまり皆キツネだ…)。
 そして、キツネのママを平然とおくさんにした、のんき者のパパにしっかり者のママ。すっかり長女気質でちょっぴり苦労症?な長女ユイ、頑固者だけど優しい弟タクミ、そしてまだ3才だけど実は大物?な末妹モエ。

 要はキツネの血をひき、一癖もふた癖もあるキツネ一族を親戚にもったばかりにトラブルに巻き込まれるファミリードラマなのですが(笑)、笑える所あり、ちょっと怖い所あり、じんわり来る所もあれば、描写がきれいでちょっと浸っちゃったりするところもあって(お風呂場で遊ぶチビ竜のシーン、幻想的できれいだった…)なかなかお得な一品でした。(2005.5.26)


「シノダ! 樹のことばと石の封印」(著:富安陽子/発行:偕成社)
「シノダ!」シリーズ2作目。↑の続きです。
 前作でちらりと出てきた、3人姉弟が生まれ持っている能力が本領発揮されます。
 私はこれを読みながら、「日本版ナルニア…?」と思ってしまいました。いやナニ、姉弟ひとりひとりがいろんな役目を持っていて、タンスのひきだしから出入りするっていう所から連想しただけですが(そしてこの本の場合、タンスは和箪笥ですが)。

 突然、開かずの引き出しから現れた夜叉丸おじさん。そしてたまたまその場にいて、開いた引き出しに吸い込まれてしまった何も知らないクラスメート。いつのまにか床に転がっていた「金のどんぐり」に招かれるかのように、三姉弟も次々と引き出しに吸い込まれ、行き着いた場所は金のどんぐりがたわわに実る、日本の古代社会をほうふつとさせる緑ゆたかな地。しかしそこには、石になったクラスメートが…。

「風の耳」「時の目」「魂よせの口」という彼らの力が、今後どんなふうに影響を及ぼしているのか。そしてキツネ一族の中でも大きな力であるそれらの能力が、なぜ半人半狐である彼らに宿ったのか。これからがますます楽しみなシリーズです。(2005.5.26)


「シノダ! 鏡の中の秘密の池」(著:富安陽子/発行:偕成社)
 やっと読みました、「シノダ!」シリーズ3作目。
 今回はトラブルメーカーのママ側親戚ではなく、人間であるパパの母、つまりは父方のおばあさんが物語の中心になります。と同時に、どうやら子どもの頃から「人間ではないもの」を好み、またそれらに好かれていたらしいパパの物語でもあります。2巻に比べて3人きょうだいの能力表現は控えめで、そこが逆に好きでした。特に、能力に頼らずにスーちゃんの変装を見抜くユイが良かったです。おばあさんも、ママの正体やママ方の親戚のことを知ってて知らぬふりをしているのではないか?と思わせる所があって、キツネ一族が見くだしている人間の、ささやかな底力も感じました。

 富安さんのお話でいつもすごいなあと思うのは、児童文学でありながら子どもに媚びず、かといって上から説教をする事もない物語であること。そして、何よりその言葉づかい。いつもシンプルで分かりやすく、時々とても叙情的なのです。読みながら肩の力が抜けるようで、いつもほっとします。(2007.7.13)


「シノダ! 魔物の森のふしぎな夜」(著:富安陽子/発行:偕成社)
 「シノダ!」シリーズ4作目。今回は子ども時代のパパとママのお話。番外編のような位置づけでしょうか。
 しばらく児童小説を読んでいなかったので、ちゃちな話だったら変に冷めてしまいそうで嫌だなあと思っていたんですが、さすがの富安作品。きちんと大人の事情も書き、核となる展開もその場面に来るまで予測できなくて、楽しく読めました。本当に、富安さんの作品にはぶれがなくて嬉しいです。

 今回の作品は子どものパパの視点から描かれていたのですが、これをママの視点から読んだらまた面白いんだろうなあと思いました。別れのシーンとか、幼いなりにせつなくて。初恋というにも至らない、「淡い」としか表現しようのないところがまた。いいですね!←年寄りの感覚(笑)
 大人になって再会して結婚に至るまでのエピソードとか読みたいですね。…これまでの作品の中であったかな?覚えてません…。ありゃりゃ。(2009.8.19)


「上海少年」(著:長野まゆみ/発行:集英社)
「雪鹿子」「上海少年」「満天星」「幕間」「白昼堂々」の五編を収録。

表題の「上海少年」は最後のどんでん返しが面白かったです。長野さんはやはり短編が好きだなあと思う短編集。「雪鹿子」は、少年の登場人物が多い長野作品には珍しく?大人の関係とそれに巻き込まれる?少年の危うさが印象的でした。あとは「幕間」かな。なんというか、あらすじだけ言ったら昼1時からのドラマになっちゃいそうな内容なんですよね、これが…(汗)。
「白昼堂々」は意外なオチでした。こういう関係をさらっと書いてしまえるところは、凄いなあと思います。(2004.10.10)


「樹上のゆりかご」(著・荻原規子/発行・理論社)
荻原規子さんの新作の主人公が、「これは王国のかぎ」の主人公だった上田ひろみだという話を聞いて、私は実は驚いていました。そういうキャラクターの使い方をする方だとは思っていなかったので。
 でも、この作品を読んで、その理由がおぼろげに分かったような気がしました。と言うのも、この物語における鳴海知章や近衛有理が背負っている背景って、もの凄く重いじゃないですか。それこそ、主人公であり物語の語り手である主人公を振り回し、意思を侵食してしまうほどの。それに耐えうるためには、主人公側にもそれに対抗するだけの背景が必要であり、そのために、かつてジャニだった上田ひろみが登場してきたのかな…などと思いました。

 そして、そういうふうに読んだ私には、この小説は別々のふたつの物語が同時に存在した「あるひと時」を描いたものに思えます。この物語以前にも物語があって、この後にも続いている。その途中を効果的に切り出したもの。この「経過地点」という効果は、ほかにもたくさん詰められています。高校生というあやうい世代の、男と女の境目。子どもと大人の境目。はっきりと現せない、もしかしたら大したことではないのかもしれない、でも本人にとっては重要なもの。そういう曖昧な雰囲気が全体にちりばめられているように思えました。そういうものって、書き方によってはとてもドロドロしたものにもなりかねないと思うんですが、それがとてもきれいに、爽やかに描かれていたと思います。(2002.10.20)


「シュトルーデルを焼きながら」(著・ジョアン・ロックリン/発行・偕成社)
シュトルーデルというのは、薄くのばした練り粉の上に甘く煮たリンゴやクルミ、レーズンなどを入れて巻いて焼いたユダヤに伝わるお菓子です。このお菓子をキーワードにしながら、あるユダヤ人一家の約6代にわたる歴史を描いています。このお菓子、ほんとに食べたい!どこかにありませんか?(2001.2.8)


「白い兎が逃げる」(著:有栖川有栖/発行:光文社〔カッパノベルズ〕)
ミステリ短編集。有栖川ミステリの探偵、火村英生が登場する作品です。
短編といっても、表題作品はちょっと眺めの中編になっています。ストーカーが殺されたのはなぜか…というものなんですが、これは時刻表をつかったトリックによる謎ですね。祖の他の短編でも、ダイイングメッセージとか、同じ顔の人間とか…本当に、作者は作品の中核となるトリックを考えるのが好きなんだなあ、と実感しました(笑)。

事件そのものは単純なものが多いんですが、そこにトリックがひとつかかることによって作品が仕上がっているんですよね…なんというか、人間関係のいざこざによる犯罪を描いたもの、というよりは、文章によるマジックを見せられている気分です。それだけに、トリックそのものが前面に押し出されて、登場人物がどんな顔をしているのか浮かんでこない、という欠点もあるんですが。

この本だと、「比類のない神々しいような時間」とか、表題の「白い兎が逃げる」もちょっとそんな感じ。キーポイントである女性だけはやたらと外見描写が多かったので、それなりに造作を想像できましたが。比較的バランスが取れていたと感じたのが「不在の証明」かな?「地下室の処刑」は、ラストは好きだけど、読み始めた時は非現実的すぎて危うく飛ばし読みするところでした。…でも、テロリストが非現実的っていうのも、現代日本人としては問題なのかなあ…。(2004.10.24)


「水晶山脈」(著:たむらしげる/発行:アノニマ・スタジオ)
ニュース番組「ブロードキャスター」のオープニングでも知られるたむらしげるさんの、短編絵本。「象の思い出」という本とたぶん対になっていますが、私はこちらの方が性に合いました。
架空の世界(パラレル・ワールド)で鉱石を採掘している山師・ホラルと知り合い、一緒にパラレルワールドで採掘を手伝うようになった男が、かの世界で体験した出来事をとりとめなく綴っています。イラストも、もちろんたむらさんが描かれているんですが(むしろこちらが主役であろう)、これがいつものたむらさんの絵とは違う雰囲気を生み出していて、目を引かれました。鉱石を描くっていうのは結構大変だと思うのですが、たむらさんの、鉱石にそそぐまなざしが具現化されているようで、とても優しく怪しげで、美しかったです。(2007.7.15)


「水晶玉と伝説の剣」<原題:THE SEER AND THE SWORD>(著:ヴィクトリア・ハンリー/発行:徳間書店)
西洋版『空色勾玉』。 …とか言ったら両者のファンに袋叩きかしらん(^^;……。
物語の筋が似ているとかそういう事では決してなく、ただ古代日本の「勾玉」と同様、西洋の「水晶玉」は神秘的なシンボルなのだなあと思ったことと、少年と少女の国をまきこむ成長を描いたものであるということ、そしてそれが素晴らしく面白いということ! …それだけなんですけどね。

主人公は後継ぎたる王子のいない国のたった一人の王女、トリーナ。後継ぎとなるはずだった最後の弟が生まれて、そしてすぐに死んだその日、彼女の父に国を滅ぼされた隣国の王子ランドンが捕虜として彼女のもとにやってくる。彼女はランドンを解放し、ひそかに友情で結ばれるが―――……。

登場人物がみんな生き生きとしていて、ぬかりがない。話の軸であるトリーナとランドンだけでなく、彼女の両親、悪役の司令官、彼に駒として使われる女性、馬番の兵士にいたるまで、あざやかな絵具で描いたような個性を感じる。死は惨く描かれ、容赦がないが、最後の最後で(王子や王女ではない)納得のいく者の手で終止符が打たれる。後半少し急ぎ気味な展開ですが、一気に読むぶんにはいいのかな? もう少し本の厚みが太くなっても、読むぶんにはついていけたと思うんだけどな(笑)。(2002.11.23)


「裔(すえ)を継ぐ者」(著:たつみや章/発行:講談社)
『月神の統べる森で』に続く四部作の外伝。前シリーズから数十年後、彼らの作った歴史も伝説となり、語る人々も少なくなった時代の、ポイシュマの遠い子孫である少年サザレヒコの冒険と成長の物語。

 物語としてはとーってもシンプルなものだと思いますです。世間知らずでわがままな少年が、自分で引き起こしたトラブルがもとで周りに一切頼ることができない環境に落とされ、そこから何かを学んで成長して帰る、という。(ありゃ、全編説明しちゃったわ…。)
 でも、個人的にこういう物語は好きなので(笑)素直に楽しかったです〜。前シリーズと違って主人公がはっきり『一人』だということもあって、焦点が定まっていて読みやすかったしね。 小学生の頃、親が買ってくれていた毎月配本制の国際版少年少女世界文学全集の中に「ゆうかんな船長」という本があって、それがまさにこんなパターンの「少年成長物語」だったんですが、とても大好きだったんですよ。あ〜、また読みたくなっちゃった。まだ家のどこかにあるはずだけど。探してこようかな〜。(2004.3.2)


「図説ロンドン都市物語」(著:小林章夫/発行:河出書房新社〔河出の図説シリーズ〕)
河出の図説シリーズです。このシリーズはどれも見やすくて面白いですね。高いけど(^^;。
サブタイトルは「パブとコーヒーハウス」。はい、その通りパブとかインとかタヴァンとかエールハウスとかコーヒーハウス、つまりは酒(一部コーヒー)と酒場の歴史を追うことでロンドンという都市の歴史も見てしまおうという本です。カラー写真がいっぱいで面白かった。やっぱりイン・サインは面白いなあ。あれだけ集めた本があるというのもよく分かる。うー、パブでエールを飲みたくなっちゃいましたよ。とはいえ、私は店内で飲むのは苦手なのでもっぱら外なのですが。(2005.10.2)


「絶叫城殺人事件」(著:有栖川有栖/発行:)
最近の読書スピードにしては早かったほうです。正味三日かな?
ミステリって、読めない時は数ページで投げ出してしまうんだけど、波に乗ると早いですよね。今回は有栖川作品ばかりまとめて読んでます。有栖川ミステリは、どろどろした人間関係よりもトリック、事件にからむ謎解きのほうに重点を置いているので、雰囲気が重くなりすぎない所がいいですね。どれも、そこはかとなく後味が爽やか。

この本は「〜殺人事件」というタイトルがついているミステリ短編を4-5つまとめたミステリ短編集なんですが、中でも表題作である「絶叫城殺人事件」はテーマが斬新でよく印象に残っています。ゲームと犯罪に関する意見というか…コレはたぶん、作者本人の意見でもあるんだろうけど…「心の闇」なんて元々存在しない、それを作るのは「心の闇」なんていう言葉を作る無責任な大人やマスコミだ…というアレね(ネタバレしないように気をつけてます…)、ああ、そうかも!と思いました。

そもそも十代やそこらの若者が自分の心をそんなに正確に把握してるわけがないよね。「いじめ」「セクハラ」「ドメスティック・バイオレンス」とかもそうだけど、ぼんやりと形がなかったものに名づけることによって、もしかしたら、そこまでは発展しなかったかもしれない些細なことを、言葉の枠にはまるように悪化させてしまう、っていうことはあると思うんです。
極端な例で言えば、私は微熱ぐらいでは熱を測りません。体温計で「あんたの体温は今何度」ってはっきり数字で出されてしまうと、かろうじてあった元気も萎えてしまいそうになるんです。気持ちまで「病気」になってしまうというか…。そんな意味で、へたに曖昧なもの、曖昧な存在を名づけて、その名にあてはまる枠組みを作ってしまうと、今度は逆に、それまで無関係だったものまでその枠の中に入ってきてしまう…というのかな。これはつまり言霊思想なんですが…
作者がそういうふうに考えていたとは限りませんが、日本ではありそうなことだと思いました。(2004.10.24)


「その時が来るまで」<原題:Until Whatever>(著:マーサ・ハンフリーズ/訳:槙 朝子/発行・ほるぷ出版)
今、読んでおくべき本だ。まさに、今。エイズを取り扱った小説は他にもあると思うし、そういった作品を私はあまり読んでいないので一概に比較はできないが、「ある日突然友人がエイズだとわかった時」の一部始終を描いた作品としてこの本はよく描かれていると思う。

もし、これまで知っていた友人のひとりがエイズだと分かったらどうするか。これまでも大親友だったり家族だったりするなら、受け入れようとする気持ちのほうが強く働くだろう。逆に、まったく親しくも共有の思い出もない人間だったら、排斥するほうに回る気持ちも分かる。この作品では、その中間地点、現時点では特に親しくはないが、昔は親しかった友人がエイズになった、という、おそらくは最も起こりやすいと思われる状況に主人公は立っている。それだけに、共感しやすい。

そして何より、彼女が安っぽい正義感で動かないところがいい。結局、人間を動かすものはその人の歴史に強く訴えかけた出来事や言葉の強さであって、正義や社会常識なんかでは測れないところにそれは存在するのだ。(2002.11.30)


「黄昏の岸 暁の天(十二国記シリーズ) (著・小野不由美/発行・講談社)
出ました!読みました!そんで一言!!
5年も待たせといてここで終わりますか〜〜〜〜!
……いえ、嬉しいんですけどね。(←フォローになってない)(2001.4.23)


「ダレン・シャン」1巻&2巻 (著:Darren Shan/訳:橋本恵/発行:小学館)
 1巻が出た直後に斜め読みして、最初は面白くない!と思ったのです。でも、今回1,2巻を一気読みして考えを変えました。それなりに面白いわ(←何様)。
 これは児童書として読むより、ジュブナイル・ホラーとでも言うか、それなりにユーモアと生活感を残したホラーとして読んだ方が正解でしょう。最初はファンタジーかと思って読んでいたので、面白くなかったんですな。
 主人公のダレンは、蜘蛛が大好きな事を除けば、あくまでも普通の男の子。人間関係を見る目も甘いし、現状認識も甘い。けれど、その時その時、ダレンは本当に真剣である、という事を念頭に置いて読んでいくと、彼が悩み苦しみながらバンパイアへの道を選ばざるを得なかった、その少年らしい心情が、可哀想で、可愛いです。
 それに、2巻以降、ダレンと契約したバンパイアの男、クレスプリーが俄然、魅力的になってきます。 1巻ではあまり印象に残らなかったんですが、2巻での「バンパイア」というより、これはもう性格というしかない「オジサン」っぷりが可笑しい。ダレンの人の血を飲むまいとする葛藤も、1巻でバンパイアになろうとする苦しみよりも余程リアルで訴えるものがあります。
 バンパイアの設定が個性的で、それゆえ物語にご都合主義的な展開もあるんですが、少なくとも続きを 楽しみにできる物語だと思います。それに、まだ2巻だしね。3,4巻で怒濤の展開を見せたハリー・ ポッターの例もあるし、楽しみにしています♪(2001.12.15)


「ダレン・シャン」3巻(著:Darren Shan/訳:橋本恵/発行:小学館)
 一番面白かったのは、デビーがダレンを映画に「誘わせる」シーンと、おやすみのキスのシーン。一生懸命大人ぶってカッコつけてる子供っぽさがとても可愛かった! 本編にあたるバンパニーズへの追跡と対決もスリル満点の展開で面白かったです。これは多分、後々への伏線かつ前哨戦なのでしょうね。ダレンとクレプスリーの信頼度も増し、それに連れて1巻で感じていた緊張感が薄れ、クレプスリーはどんどん男やもめ化しております(笑)。このシリーズを小中学生の時に読んでいたら、さぞかし夢中になった だろうな〜。

…と思うので、以降は作品ではなく小●館(いまさら伏せ字にしても…)への文句(笑)。

 このシリーズ、現在だけでも9巻までの続刊が決定しており(オフィシャルサイト確認)、その後もどんどん続く模様。しかもこの文章量から察するに、子供がお小遣いで集めやすい18p版ソフトカバーで出版しても良かったんじゃないの? 実際、原書で多く出回っているタイプは廉価版で、これならたとえ20巻でも本棚に並べられるぞ(笑)、というようなもの。折り込み情報紙にしても、某超ベストセラー(バレバレや/笑)の二番煎じを狙っているのが見え見え…いや、それは良いんだけど(経済社会の常だし)、何も例のシリーズの悪い点(子供向けを意識した訳にも関わらず、子供が入手しにくい高価ハードカバー)を真似しなくたって(泣)。本当に子供に読んでもらいたきゃ、子供が手に入れやすい値段&持ちやすい装丁で売り出せっつーの。ぶつぶつ。(2002.1.4)


「ダレン・シャンW〜バンパイア・マウンテン」(作:Darren Shan/訳:橋本恵/発行:小学館)
 邦訳4巻です。ええと、まあ、相変わらず面白い事は面白いんですが、何だか今ひとつ余韻に物足りなさが漂いました。
 ひょっとしたら、4巻から1巻完結ではなく続きものになっているせいもあるかも知れません。3巻まではバンパイアになった主人公ダレンの心理描写にも力が入っていたように思うのですが、4巻は3巻から6年後の話で、ある程度バンパイアの生活に慣れたダレンの視点からバンパイアの世界や社会が描かれているせいか、どうしても物語そのものよりも物語以外の事――バンパイアの組織や歴史や小物など――に描写が偏っていて、物語そのものの進展はほとんど無かったように感じられました。
 それでも最後まで楽しく読めたのは、この『物語以外のこと』の部分に、作者自身が楽しんで書いているのではないか?と思わされるような、遊び心が漂っていたからです。バンパイアの内部組織や、バンパイア・マウンテンの内側について。壁にかけられた拷問(?)器具の種類まで、いやもう実に細かくて(笑)。何だか、子供の頃に描いて遊んでいた人形の家の展開図を見せられているような印象を受けました。
 「名作」にはなりえないでしょうが、親しみやすい小説ですね(あ、自爆?/笑)

 まあ、内容はそれで別に構わないんですが…個人的に付け加えさせて貰えば、「あくしゅ」ぐらい漢字で書いて欲しかったですね…。内容の流れから言ってこの行為を強調したかったのは分かりますが…なんと言うか、こう…脱力しました(泣)。この訳文、微妙に変ですわ…。(2002.5.12)


「探偵ガリレオ」(作:東野圭吾/発行:文藝春秋社)
 ドラマ効果で読んでみた。でもドラマ見てなかったけど(笑)。
 人間ドラマというより、トリック重視のミステリですね。今、読みたかった感じのものではなかったけど、短編を5本集めたオムニバス形式だったので、読みやすかったです。読みやすいのが大きな特徴と言ってもいいのかな。でもこれが長編一本だったら、最後まで読めたか自信はありません。
続編も何冊か出ているらしいので、同じようなオムニバス形式なら、他に読みたい本もないけど何か軽めの活字が読みたい、という時に読んでみようかな。と思いました。
でもミステリって一度読んだら再読しない派なので、古書店か図書館かもしれませ…ん…。(2009.2.19)


「探偵伯爵と僕」(作:森博嗣/発行:講談社〔ミステリーランド〕)
子どもの視点から書かれた大人世界の不思議を丁寧に書こうとしているなあと思い、好感が持てました。「探偵伯爵」の不思議っぷりが際立っていて、フィクションである小説に逆にリアリティを与えている。何だか、時々N●K教育テレビでやっている、子ども向けのミステリードラマみたいだなあ…と思いつつ読んでいたら、最後の最後でどんでん返しが。やられました。これじゃ、映像化は難しいわな(苦笑)。(2004.9.18)


「ちんぷんかん」(作:畠中恵/発行:新潮社)
「しゃばけ」シリーズ第6弾。やはりこのシリーズは長編より短編によるオムニバス形式のほうが面白いと思います。今回は(またも)危篤状態に陥った若旦那が三途の川べりで遭遇する出来事「鬼と小鬼」、以前も登場した広徳寺の僧、寛朝の弟子、秋英視点による「ちんぷんかん」、若旦那の母おたえの若い頃の恋話「男ぶり」、若旦那の腹違いの兄、松之助の縁談話「今昔」、若旦那と桜の花びらとの切ない終章「はるがいくよ」の五話収録となっています。若旦那自身の体験から家族の物語、そしてしみじみとした終章と、全体的にバランスが取れた一冊ではないでしょうか。個人的には「鬼と小鬼」で若旦那と知り合った少年の再登場が楽しみです。(2008.1.24)


「つくも神」(作:伊藤 遊/発行:ポプラ社)
タイトルと著者と表紙の絵でつかまりました。……んが……うーん、「つくも率」30%、ってとこかな。よくありがちな現代の子供が主人公なのですが、正直このパターンの児童よみものはもう腹いっぱいで…(以下略)。せっかく付喪神っていうドキドキする存在がいるんだから、もうちょっとひねって欲しかったな〜。…ぜいたく?(2005.5.25)


「デルトラ・クエスト」1〜4(作:エミリー・ロッダ/訳:岡田好惠/発行:岩崎書店)
1巻「沈黙の森」、2巻「嘆きの湖」、3巻「ネズミの街」、4巻「うごめく砂」を一気読み。
 や、面白かったです♪ 「ローワン」シリーズにも生きていた謎解きの巧さは健在。個性豊かな登場人物、誰が敵か味方だか。毎回現れる「魔境」とそこへ辿りつくまでの「謎」には見るからにアイデアが凝らされていて、そこに力が入る余りに人物の書込みが薄いのではと思いきや、けっこう一人一人が自分の意思を持っているところも見せてくれて。そして、それらを貫いているのが作者の「思想」でも「訴えたいこと」でもなく、ただ「スピード感のある面白さ」なんですね。この思い切りが良い。本当に(良い意味で)活字で読むゲームか漫画みたい。いつもゲームやアニメのノベライズ版を読んでいる中学生に薦めてみようっと。(2002.11.16)


「デルトラ・クエスト」5,6(作:エミリー・ロッダ/訳:岡田好惠/発行:岩崎書店)
5巻「恐怖の山」、6巻「魔物の洞窟」が出たので読みました。
 スピード感のある展開と奇抜なアイディアが面白かったです!8巻で最終巻ということでそろそろ最後の謎である行方不明のデルトラ国王の血筋の子も出てきそうな感じなんですけど。っていうか、既に出ている登場人物の誰かがそうなんだよね?誰だろう……トーラの出身ということでデインかなっていう気もするんですけど。ジョーカーがあんなふうに守っていたくらいだし。うーん、誰だ〜誰だ〜。
 一巻ごとにひとつ宝石を取り戻していくのはもう分かっているので(笑)ドキドキハラハラ、というよりは「今回はどんな怪物が出てくるんだろう、どんなふうにそれを切り抜けるんだろう」という作者の仕掛けを楽しみながら読めました。次に7,8巻が一緒に出て終わりなんですよね。うー早く読みたい!(^^)(2003.1.16)


「デルトラ・クエスト」7,8(作:エミリー・ロッダ/訳:岡田好惠/発行:岩崎書店)
7巻「いましめの谷」、8巻「帰還」を一気読み。
 ひっかかかったー!!(笑)うわあっ、見事に作者に引っ掛けられました。嬉しい(笑)。7巻ではさすがの仕掛けにぎょっとさせられ、8巻では例の「国王の血を継ぐ者」を探すリーフの視線にくぎ付けになりました。ふわあ…まさか、こんな展開だったとはなあ。うーん、また1巻から、今度は一息に読んでみたいものです。(2003.2.27)


「デルトラ・クエストU」全三巻(作:エミリー・ロッダ/訳:岡田好惠/発行:岩崎書店)
 1巻「秘密の海」、2巻「幻想の島」、3巻「影の王国」の全三巻。
 うーん、期待しすぎたかな…? というのが最初の感想。時間軸としては先に発行された「デルトラ・クエスト」全8巻の続きで、登場人物たちも一緒です。でも、リーフはともかく、ジャスミンは前作でもこんなに短気で考えなしで読んでいて痛々しい人物だったかしら?山の中で育った少女ってことで感情が先走る子ではあったけど、それでも前作ではだんだん成長していく様子があったと思うんだけど、いきなりふりだしに戻った感じ。とってつけたような恋愛感情も不自然でした。「ネシャン・サーガ」でも思ったことだけど、海外ファンタジーの冒険もので、主人公の男の子が誰かに恋するといきなりそこだけ空々しくなるのは何故だろう。訳文のせい?

 そういうわけで、2巻までは挫折しそうだったんですが、やっぱり2巻の途中からは最後の謎ときが知りたくて最後まで読んでしまいました。今回のラストは前回にも増して「そんなご都合主義な展開があるかー!」と叫んでしまいたくなるようなオチでしたけど(笑)、まあ、面白かったです。 (2004.3.21)


「天地のはざま」(著:たつみや章/発行:講談社)
たつみや章さんの古代ファンタジーシリーズ全四作の三作目。 (…なんか、だんだんRPG化しているよーな気がするんですけど…)…というのは置いといて、まあ、面白かったんですけど…話がちょっと長いかな?この三作目も、前半までは中だるみっぽかったんですが、後半から話が動き始めてきます。っていうか、ポイシュマとワカヒコが離れた途端に話が進むってのはどういうわけよ(笑)。
 そしてホムタがっ…!(悲)彼、ご贔屓だったのに(笑)。いやマジで。善悪混然的な人は好きです。シクイルケのような人はうっとうしいだけですね(笑)。彼はアテルイと一緒だったからこそ人間味があったわけで、霊的存在になった今となってはむやみやたらに首突っ込まないで欲しい(笑)つーか、あんた実際にはほとんど役に立ってないし!(爆)←ファンの方は読み飛ばすべし
 余談ですが、ラストで「きわどいな…」とつぶやいてしまいました。だって「大蛇」が出てきちゃったから。大蛇と言えば私は荻原規子さんの「白鳥異伝」しか思い出さないもので、どうしても比べてしまうんです。私としては比べたくないので、四作目ではどうにかなるといいな…。
 そしてやはり、東逸子さんの挿画が美しい!この挿画を理由に読み始めた人は多いだろうなあ。(かくいう私もその一人。)(2001.5.29)


「透明人間の納屋」(著:島田荘司/発行:講談社〔ミステリーランド〕)
うーん、暗かった…そして、せつない終わり方だった。「透明人間」の謎とか、ちょっと恐いくだりとか、島田作品によくある薀蓄とかは読みごたえがあったんだけど。でも、最終的になんだか、あまり救いがなくて…少年時代のあやまち、で済ますには、ちょっと重過ぎる最後だったかなあ、と。謎の仕掛けはすばらしくて、その謎解きが読みたくて最後まで読んだようなものですが、逆に言えばそれがなかったら途中で挫折していたかもしれません。結局、「一番恐いのは人間なんだよ」っていう話かなあ、と思いました。人間とか体制とか、ひとの所業ほど恐いものはないなと。(2004.7.5)


「童話の国イギリス」(著:三谷康之/発行:PHP研究所)
「不思議の国のアリス」「秘密の花園」「くまのプーさん」「メアリー・ポピンズ」など、イギリス児童文学の世界からイギリスの風俗を紹介している、面白い本です。とりあげられている物語の中で、私が知らなかったのは「子ぶたサムの物語」。…今度読んでみます…ワーン。
軽い文体とカラー写真でするするっと読めちゃいました。楽しかった!(2005.5.25)


「とちめんぼう劇場」(著・おかべ りか/発行・福音館書店)
面白いです。サイレント映画みたいな、せりふのない漫画なんですが。主人がいない間にビールをらっぱ 飲みする金魚とか。手動10円プリクラとか。食べても食べても当たりが出てくるアイスキャンデーとか。よくわからない?…でしょうねえ(笑)。うまく説明できないおもしろさですわ…(笑)(2001.3.28)


「虹果て村の秘密」(著:有栖川有栖/発行:講談社〔ミステリーランド〕)
これまで4冊、この『講談社ミステリーランド』シリーズを読みましたが、その中で「謎解き」という点において一番面白かった作品です。推理小説家になりたい刑事の息子と、刑事になりたい推理小説家の娘が、陸の孤島となった辺鄙な村で起きた殺人事件を解く…というあらすじだけでまず面白かったし、終わり方もさわやかでした。子どもに何かを押し付けようというのではなく、まずは「面白いこと」を重視しつつ、それでいて大人から子どもへの切ないメッセージがさらりと入っていて、大人の一人として「ぐっ」と来ました。
 有栖川さんのミステリー作品は昔よく読んでいたんですが、最近ごぶさたになってました。また読み初めてみようかな〜。(2004.9.19)


「ネシャン・サーガT ヨナタンと伝説の杖」 (著・ラルフ・イーザウ/訳・酒寄進一/発行・あすなろ書房)
長い物語の第1巻です。いやもう厚くて最初はひるんだけど読み始めたら面白かった♪ 主人公は二人。一人は20世紀初頭スコットランド、領主の孫息子で車椅子の少年ジョナサン。彼はたびたび異世界に生きる少年、ヨナタンの夢を見ていた。ヨナタンはある日、その異世界の行く末を決める魔法の杖を手に入れ、それを正統な持ち主に返すために旅に出る。それからというもの、ジョナサンとヨナタンの存在が混在し始め、互いの世界が近づきはじめて…2巻が楽しみです〜。(2001.5.15)


「ネシャン・サーガU 第七代裁き司の謎」 (著・ラルフ・イーザウ/訳・酒寄進一/発行・あすなろ書房)
あ〜良かった、面白かった…って、え? まだ続くの??(笑)
こんなにきれいに収まってるのに…。いや、そう言われて見れば、まだいくつか残っている謎というか、問題も無いでは無いですが、でもそれは結果が分かっている謎というか…当初の不思議、ジョナサンとヨナタンの謎が(それなりに)収まってしまったし…(でもあの終わり方は酷いと思う。と言うか、ジョナサン側の世界の書き込みが足りないと思う。お祖父さん、好きだったのに…1巻であんなに人間的魅力を出していたのはどういう伏線だったの?家庭教師も、もっと出てくると思っていたのに。あれが3巻への伏線なら納得します。そうあって欲しい)3巻は2巻終了後、3年後、という設定だそうです。となると、物語的には1・2巻が第一部、3巻が第二部ってことになるんですかな。
 ヨナタンが成長しちゃって、どんどん賢人化してくるので人間的魅力という意味では今いちなんですが、その分、脇役が充実してるので良かったですね。特にこの巻で登場するがね(笑)。
 3巻はフェリンの為に読みます(笑)。(2001.7.20)


「ネシャン・サーガV 裁き司 最後の戦い」 (著・ラルフ・イーザウ/訳・酒寄進一/発行・あすなろ書房)
 つ、疲れた…(笑)。あのー、やっぱりこれは2巻までで第1部として、3巻は第2部として4冊まで延ばした方が良かったのでは…(冷や汗)。何だかもう、話についていくのが精一杯で、登場人物の心情が良く分かりませんでした(泣)。世界観はもう「凄い」の一言で、現実世界とネシャン世界の微妙な絡み合いといい、ラストシーンで出てくる地球といい、想像力の極地、ため息をつかずにはいられないものがあるんですが、人物描写の点でどうにもこうにも…かゆい所に手が届かない、といった印象が拭えません。
 特に恋愛について。和解したばかりの父と兄を相次いで亡くし、悲しみの淵で都なんてどうでもいい!とまで思っていたフェリンが、会ったばかりの女性に一目惚れしただけで立ち直りますか…?(泣) 2巻の最後で会ったばかりだったビティアとヨナタンが、3巻の冒頭で既に愛し合っている所も不自然だし。
 ひょっとしたらイーザウさん、あえてこの物語には恋愛を絡めたくなかった…けれど、ラストをどうしてもあのシーンで終わらせたくて、ああいう展開にしたのでしょうか。恋愛を絡めるつもりなら、それはもっと、ヨナタンが目指す「世界の洗礼」への過程において、ヨナタンを勇気づけ、あるいは誘惑するものとして、深く詳しく書かれていたはずです。せっかくだから、世界観だけに終わらない、そういう話が読みたかったな。話を急ぎすぎて、フェリンとヨナタン以外の登場人物に重みが足りなかったし。ヨミなんざほとんど見せ場が無かったし(泣)
 ああ、語りが止まらない…ですが、一言で言えば、もったいない!(笑)(2002.1.9)


「ノーラ、12歳の秋」<原題:Sanning eller konsekvens>(著・アニカ・トール/訳・菱木晃子/発行・小峰書店)
原題は『告白か罰か』。スウェーデンではポピュラーなゲームで、問われた質問に答えるか、あるいは罰ゲームをするかを選ぶというものだそうです。この原題通り、かなりシビアな作品。主人公の12歳の少女ノーラの視点から、複雑な家庭環境や学校でのいじめ、そしていじめる側の少女といじめられる側の少女が置かれた背景まで、鋭く描かれています。痛い…読んでいて痛い(泣)。大人も子どもも自分のことだけで精一杯で、自分達がどこへ転がっていくのか分かっていない辛さがあります。でも、最後に母と子がしっかりと向き合い、そしてノーラがこれまでの自分には出来なかったことをするように駆けていくシーンには夜が明けていくようなすがすがしさを感じました。(2002.11.18)


「配達あかずきん」(著:大崎梢/発行:東京創元社)
 書店を舞台に書店員が解決するミステリ。ストレートに『面白かったです!』
 本好きな人なら謎部分のみならず、舞台すべてが楽しめるんじゃないかな。私は図書館で働いていましたが、「六冊目のメッセージ」なんか、図書館員にも通じる夢のシチュエーションですよね(笑)。ああ、こんな出会いがあったら…!
 「パンダは囁く」なんて、そんな所に目をつけるか!と唸りましたし。「標野にて 君が袖振る」のしっとりとした読後感など、特に本そのものにまつわるこの3篇が特に面白かったです。ああ、こんな感じので図書館が舞台のやつが読みたい〜!図書館だと、書店とは似て異なる所が出てくるでしょうね。返却された本に挟まれた忘れ物にまつわる謎とか!壊れかけた本を修理しようとして出てきた謎とか!財政難を理由に閉館を迫る本庁から図書館を守る戦いでも良し、夏休みの子どもの自由研究の手伝いから発展した子どもトラブル解決編でも良し。っていうか、どうしてそういうミステリがないのか、そのほうが不思議。もしかしたら既にあるのかも…探してみよう。
 もちろんこの本の続編も待ってます♪(2008.4.22)


「白鳥とくらした子」<原題:THE LORD OF THE RUSHIE RIVER>(作・絵:シシリー・メアリー・バーカー/訳:八木田宣子/発行:徳間書店)
イギリスで妖精を描くイラストレーターとして名を残した作家の、1938年発表の作品。とにかくイラストがきれい。どの挿絵をとってもそのまま一枚画として通用する美しさです。この方のファンは今でも多いみたいですね。ほとんどの挿絵がカラーなので(その分お値段もこの手頃の本としては張るけど)ファンは必携です。

お話もとてもすてきです。人間社会で辛い目にあった子供が動物の世界で動物に庇護されて育つ話ってどうしてこうドキドキするんでしょう。しかもこの話はそれが白鳥で、かわいい女の子なわけですから。少女の夢全開!てな感じですか(笑)。そういえば表紙もそうだけど、白鳥と一緒にいるスーザンのイラストは、どうしてもギリシャ神話の「レダと白鳥」をイメージさせられます。お話の流れはもちろん全然違いますけどね。(2002.12.16)


「八人のいとこ」<原題:Eight Cousins or The Aunt Hill>(著:オルコット/訳:村岡花子/発行:角川書店〔角川文庫〕)
「若草物語」の作者オルコットが描く、もう一つの少女小説。裕福ではあるが、両親を失い病気がちでしおれた花のようだった少女ローズが、医者である愉快で賢い叔父と従兄弟である七人の少年たちに囲まれて、心身ともに健康な少女になるお話です。

 なんせ130年以上(!)前の作品なので、当時の道徳観とか教育方針が現代にはそぐわない所はありますが、個性ゆたかな6人の叔母たちや7人の従兄弟たちが引き起こす愉快で華やかな事件の数々はとても楽しく、どんどん読めてしまいます。図書館にはいくつか訳者編者が違うものがあると思いますが、最も原著に近い(と思われる)村岡花子さんの訳本がお勧めです。(2008.1.9) ★続編「花ざかりのローズ」


「ハッピーデイズ」<原題:HAPPY DAYS>(著:レーナ・マリア/発行:小学館)
最初の数章を読んだ後、パラパラとめくりながら目についた章を拾い読み。大きな章のほかに細かい章に分かれているので、そういう読み方ができました。

生まれつき両腕と片脚が半分しかないスウェーデンのゴスペル・シンガー、レーナ・マリアも日本でよく知られるようになりましたね。実はまだ彼女のコンサートには行ったことがないんですが、本はいつもこんなふうにパラパラと見ています。この「ハッピーデイズ」は彼女の生い立ちから人生で学んできた大事なことのほかに、主に結婚後の生活について述べられてるため、夫婦愛や家族についても触れられています。
しかし本当に彼女は率直で、明るくて、強靭なひとなんですね。こういうハンディキャップを持った人に関する本って、「ある日突然想像もしていなかった不幸が起きて」→「それでも必死に頑張って」→「今、自分を幸せだと言える」というパターンが多いと思うんですが(す、すみませんそれが悪いと言っているわけではなく!パターンとして!)この本にはそういった悲壮感はまるで無いと言っていいです。むしろ元気を出したい時に読みたい本。落ち込んだ時に読んでみたくなるだろうな。心から「人生はすてきな贈り物だ」と言いたくなるために。(2003.1.23)


「ハッピーバースデー 命かがやく瞬間(とき)」(著:青木和雄/発行:金の星社)
教育カウンセラーや保護司をしている著者による、実話に裏づけされた『読み手に訴える作品』。著者のストレートな思いやメッセージが読んでいてひしひしと感じられる。いじめを扱っている…というよりも、親や社会と子どもの間にある齟齬や断絶、そういったものに目を向けることで子どもの社会を見つめ直そう、という姿勢が感じられた。発行後、読者から著者に向けて手紙がたくさん送られたというのもわかる作品だ。読んでおいて損はなし。新しい児童文学のかたちだと思う。

だが、最初読んだ時は、すごくこの作品が「おきれいな寓話」に思えて仕方がなかった。現実はこんなにスムーズに問題が解決するものではないし、こんなに自分に正直な人ばかりではない。いい作品だ。著者のメッセージも良く分かる。だが、問題も解決方法もすべて作品の中で語られていて、現実の自分の中に切り込んでくる痛み、思わず本を投げ出してしまいたくなるような痛みには欠けていた。ではそれはどういう作品なのかと言うと、次のさとうまきこさんによる同タイトルの「ハッピーバースデー」をどうぞ(笑)。(2002.11.18)


「ハッピーバースデー」(著:さとうまきこ/発行:あかね書房)
小学生の頃から家にあったのに、そのあまりのリアリティからくる痛さに中学生になるまで読み通すことができなかった思い出の作品(笑)。

主人公は小学校6年生の少女ユカリ。クラスの中にあるいくつかのグループのひとつ、それもクラスを取り仕切るほどの力があるわけではない平凡なグループの中でも特に平凡なおとなしい女の子。だが、クラスの女の子の中でもとりわけ目立つリーダー的存在の少女ヤーヤンと同じ誕生日、同じ星座だと分かってから、ユカリは急にヤーヤンを気にするようになる。同じ誕生日、同じ星座。占いではまったく同じことが載っているのに、なぜ自分と彼女はこんなにも違うのか……。

はた目にはたわいなく過ぎているように見える学校生活の中で、次第に訪れるクラスの変化。それを止めることも、逆に煽り立てることもなく、ただ見つめているユカリの視線はすごく等身大で、読んでいるうちに自分も彼女のクラスの中で彼らを見つめているような気にすらなってくる。むろん、それは私自身がこの「ユカリ」に良く似た少女だったからに過ぎないかも知れないけれど…。でも、読書好きな女の子ってこういうタイプが多くないですかねえ。思い込みですか(笑)。
ラストシーンが、決してはっきりした解決の形では終わっていないだけに、少女だった頃の自分と今の自分とを振り返って考えこんでしまいました。(2002.11.18)


「鳩の栖(すみか)」(著:長野まゆみ/発行:集英社)
「鳩の栖」「夏緑陰」「栗樹〜カスタネア」「紺碧」「紺一点」の五編を収録。

ざかざかっと読んだ長野作品3冊の中では、一番最初に読み、そして一番好きな短編集です。長野作品のシンボルとも言える、様々な少年の心理が楽しめます。「鳩の栖」は、水琴窟の澄んだ音色と、人気者の同性に遠くから憧れる少年の心が繊細な作品。他の四編は、主に家族やそれに準じる人との関係を描いていますが、いずれもさりげない、近いがゆえにためらってしまう関係を細やかに描いている所に好感を持ちました。長野作品の、一種くどいような情景描写や心理描写は、こういう、言葉では簡単に言い表せない関係を描くのに一番はまっていると思うのですが。(2004.10.10)


「裸のダルシン」(著:C.W.二コル/発行:小学館)
イギリスはウェールズでケルト神話を聞いて育ち、今は長野県黒姫に住む、自然保護活動や探険家として知られるC.W.ニコル氏の作品。語り部口調で書かれているので、読み聞かせもできるかと思われます。
内容はファンタジー…として読むと逆につまずくかも? むしろ「ロビンソン・クルーソー」か「十五少年漂流記」が好きな人におすすめ。「大きな森の小さな家」でブタを丸々一匹さばく細かい描写が好きだった人にもおすすめ(笑)。風や草の香りがしてきそうな、みずみずしい自然描写はさすがと言うべきか。国を追われ、文字通り裸で野山に追われた王子ダルシンが己の知恵と勇気だけを頼りに自然を生き抜いていく過程がみごとです。(2002.11.23)


「花ざかりのローズ」<原題:Rose in Bloom>(著:オルコット/訳:村岡花子・佐川和子/発行:角川書店〔角川文庫〕)
「八人のいとこ」の続編。前作から数年後、2年間のヨーロッパ旅行から帰ってきたアレック叔父、ローズ、フェーブはもはや少女ではなく娘であり、六人の従兄弟たち、とりわけ年上の三人もまた青年に成長していました。お約束のロマンス編です。

これも版によって内容が異なり、特に日本の少女向けに訳されたものはアーチーとフェーブのロマンスがかなり削られているので、前作同様、村岡さんと佐川さんによる角川版がお勧めです。無邪気さや純真さという点では前作に劣りますが、19世紀の終わりから20世紀初頭にかけての上流社会の生活や、当時の道徳、善しとされる人間そして女性のあり方というものがうかがえて面白いものがあります。(2008.1.9)


「玻璃の天」(著:北村薫/発行:文藝春秋)
 「街の灯」に続く、英子&ベッキーさんシリーズ第2弾。英子と兄・雅義の小気味良い会話や、本と映画の話題で盛り上がる女学生など、今回もとても面白かったですが、前冊よりもより深く心に残る話でした。今回は「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の三編が収められていますが(時間軸としてはつながっています)、特にベッキーさんの過去の傷が明らかになる「玻璃の天」はなんとも痛々しい結末で、ただのミステリとは言い切れぬ、もしかして作者はミステリの様式を借りてこれを訴えたかったのではないかという気すらしました。「幻の橋」での英子と若月少尉の会話といい、ベッキーさんの語る「漢書」の言葉といい、深く豊かな思索を誘う言葉を織り交ぜながら、あくまでも文章は軽やかで、読みやすかったです。やっぱり好きだなあ、このシリーズ。第3弾も待ってます。若月さんの再登場を強く希望!(2008.4.16)


「はるかニライ・カナイ」(著:灰谷健次郎/発行:理論社)
舞台は沖縄、渡嘉敷島。慶良間諸島という、沖縄本島から割と近めの離島郡で、海の美しさでは世界的に有名な所です。ダイバーが良く行く所です。そこを舞台に、穏やかに、互いを思いやって生きる人々の暮らしを切りとってきたように描いた爽やかな一編です。でもたぶん、これは、沖縄そのものを書こうとしたのではなく、人間の心の美しさとか、平和の大切さとか、戦争のむごさとかを、沖縄を「使って」書きたかったんだろうな、と思います。現実はさすがにこうはいきませんもん(苦笑) (2001.9.2)


「パンプルムース氏のおすすめ料理」(著・マイケル・ボンド)
「くまのパディントン」の作者が書いたミステリ、という事で好奇心まんまんで借りてきたのですが、ミステリなのに死人が一人も出ず、どちらかというとグルメ&お色気中心という笑えるお話でした。やっぱりどこかパディントンを書いた人だよなあ、と頷けたりして(笑)(2001.2.8)


「緋色の皇女アンナ」<原題:Anna of Byzantium>(著:トレーシー・バレット/ 訳:山内智恵子/発行:徳間書店)
11世紀のビザンチン帝国(東ローマ帝国)の皇女アンナの、5歳から17歳までの半生を描いたノンフィクション・ドラマ。要するに成長物語なんだろうけど…やけに凄まじい成長物語だな(^^;皇帝の王座を争って、実の弟と命を張った陥れ合いをするとは。 結局は、姉と弟を表面に出した、嫁と姑の争いなのでドロドロに生々しいっす。特に姑が恐い。この人実はアンナを将来陥れることまで画策して彼女を手懐けていたんではなかろうか。でも、読後感は良いです。実の家族と命を狙い合うのも皇女に生まれたが故の必然と考えれば(…考えたくないけどさ)、極限まで戦って負けて、隠棲した後は歴史書を書いて後世に残したアンナという女性は、実に格好いいですね〜。(2001.6.8)


「ひかりの国のタッシンダ」<原題:Tatsinda>(著:エリザベス・エンライト/訳:久保田輝男/発行:フェリシモ出版)
 40年近く前に書かれた作品です。物語そのものは古典的ですが、繊細な世界設定や、すべての人物の名前に「タ」がついたり、すべての動物の名前に「チ」がついたりする言葉のリズムが楽しくて、何度も読み返してしまいました。私は、物語というものは何度も前に戻って読み直したり、好きなシーンで立ち止まったりしながら読むのが楽しいと思っているので、絵本ならともかく、物語を子供に読み聞かせるのはあまり賛成できないのですが、この本に限っては、読み聞かせてもいいなあと思いました。善悪がはっきりしているし、言葉からくる色のイメージがあざやか。それにやはり、音のリズムがいいのです。名前で敵か味方かわかるネーミングぶりですから(笑)。
 昔にかかれた物語の良さが、いっぱい詰まっている話だな、と思います。今、現代で、こういう素直な作品を嫌味なく書ける人って、なかなかいないのではないでしょうか?(2002.6.7)


「人と土地と歴史をたずねる 和菓子」(著:中島久枝/発行:柴田書店)
 あはは…(^^;小説じゃありません。和菓子の歴史の本なんですが、これが面白くて!
 羊羹のルーツが「羊」の「羹(あつもの。昔のスープの呼び名)」、すなわち羊の肉を煮込んだスープだったとか、寒天はもともとトコロテンを真冬の屋外に放置していたところ、これが乾燥して凍ったものが保存食になったのがルーツだとか、シーボルトは帰国する時、日本人妻と娘のために当時高価だった白砂糖120キロを残していったとか、とにかく甘いものに関する雑学の宝庫です。
 代表的な和菓子の作り方と、現在入手できる和菓子と和菓子屋さんを写真入りで紹介してます。前頁カラーなのがまたvv 甘いもの好き、和菓子好き、もののルーツを知るのが好きな方なら面白く読めるのではないでしょうか♪(2002.4.4)


「日輪(ひ)の神女(かむめ)」(著:篠崎紘一/発行:郁朋社)
 某所からいただいた本なのですが、これが意外に面白かった…!時は古代、邪馬台国。卑弥呼が世を去り、卑弥呼の実弟・志穂彦が邪馬台国を治めている時代の物語で、主人公は志穂彦が奴国の首長の娘に産ませた少女、台与(とよ)です。魏志倭人伝に登場する、卑弥呼の跡を継いだといわれる少女神女ですね。台与は卑弥呼の娘という説も聞いたことがあるんですが、この本では志穂彦の娘説を取っています。
 で、この物語は台与がすさまじい修行を乗り越えて邪馬台国の齊主(=祭主? 祭祀をとりおこない、首長を補佐し首長からも敬われる国随一の神女)になる物語なんですが、なんといっても邪馬台国の思想や風俗社会の描き方が面白いです!本当にあったことを記しているようなリアリティとみずみずしさがあって、これはいったいどこまで史実モデルがあるんでしょうか!?全てがオリジナルとしたら、とんでもない想像力です。呪いの言葉とかが沖縄の「おもろ」に似ていて、興味深かったです。続編もあるようなので、機会を見つけて読んでみたいです。(2008.1.10)


「秘密の京都 京都人だけの散歩術」(著:入江敦彦/発行:新潮社)
 観光ガイドブックに出てくるような場所はほとんど見ちゃったんだよね、もっとコアな所が見たいよ、という観光客のための京都の本。たぶん。だって、京都の地図や方角がある程度頭に入ってないと、読みながら著者と一緒に散歩できないから。でなければ、地図を片手に見ることになるでしょ。
 そういうわけで、洛北・洛西・洛中・洛東・洛南と、京都の5つの方面に分かれて一章ずつ書かれているんだけど、私も行ったことのない所の章はよく分からなかった。私にはまだまだこの本を読んで楽しむだけの京都ファンじゃないんだなあ…と思いました。京都上級者(そんなんあるのか!?)向けです。(2006.3.8)


「ふくの神どっさどっさどっさぁり 羽黒町手向のサイの神」(作:つちだよしはる/発行:リーブル)
 山形県羽黒町で今もおこなわれている冬のお祭り「サイの神の祭り」の一部始終を、楽しくかわいい絵で描いた元気のいい絵本です。方言のひびきが良くて、ついつい何度も手にとってしまいました(^^;。絵も可愛いですよ〜。お祭りの主人公になってすべてを任された子供たちの、緊張しつつも責任を持って果たそうとしている一生懸命さと、それを見守るおとなたちの優しい視線を感じました。いいなぁ、こんなお祭り。(2002.5.1)


「ふしぎなマチルダばあや(原題:Nurse Matilda」(作:クリスチアナ=ブランド/訳:矢川澄子/発行:学習研究社)
 映画「ナニー・マクフィーと不思議なステッキ」の原作、ということで読んでみました。既に絶版なので、図書館にて。
 ブラウンさん夫婦の子どもたちは、とんでもないわんぱくだらけ。子どもたちの世話をするために雇われた、ねえやや、ばあやや、家庭教師たちを次々に追い出し、しまいには誰もブラウンさんの家に人を紹介しなくなってしまいます。「ばあやを紹介してください」と頼む夫婦に、人々は「マチルダばあやでないと!」と答えるばかり。でもマチルダばあやって誰?どこにいるの?そう悩むブラウンさん夫婦の前に、マチルダばあやは突然、何の前ぶれもなく現れます。全身黒ずくめ、それは醜い姿のマチルダばあやは、不思議なことを言います。「おたくのお子さんがたには、七つのおけいこをしてさしあげます。」「お子さんがたが、いやだとおっしゃればおっしゃるほど、わたくしがぜひいりようだというわけですのよ。」「わたくしにいておくれとおっしゃる――そうなったら、わたくし、おわかれしなくちゃならないんですのよ。」

 なんとなく、「ピグルウィグルおばさん」をほうふつとさせるお話ですが、あちらはアメリカで、こちらはイギリスのお話。読み比べると、子どもたちの人格形成やら文化やらの違いがはっきり分かって面白いです。イギリスのほうがあくどいというか、結構しんらつな感じがするのは気のせいかしら…(笑) (2009.5.28)


「『不思議の国のアリス』の誕生〜ルイス・キャロルとその生涯」(著:ステファニー・ラヴェット・ストッフル/監修:笠井勝子/発行:創元社〔『知の再発見』双書73〕)
 つまりは、「不思議の国のアリス」の著者であるルイス・キャロルの伝記というか、ドキュメンタリーなんですが。
 これが面白かったんですよね…。
 この「知の再発見」シリーズは小さめのサイズで持ちやすい上に、ほぼ前頁フルカラー、文章のほかに写真も絵もてんこもりなので、興味のあるテーマを手っ取り早く読み解くにはすごく使い勝手のいいものです。けっこうちょこちょこ読んでいる。
 特にこの「アリス」についての本では、写真家でもあったルイス・キャロルが撮ったアリスを初めとする子供たちの写真や、大人たちの肖像、ルイス・キャロル自身が描いた挿絵やイラスト、そして「アリス」といえば定番のテニエルの挿絵もふんだんに使われています。個人的に好きなラファエル前派の画家たちや、「お姫さまとゴブリンの物語」を書いたジョージ・マクドナルド一家とキャロルの親交が深かったということも書かれていて、読んでて「えええ〜!」と思ったもんね;同じ時代の人だとは知っていましたが、まさか家族ぐるみの付き合いとは。びっくり。

 その他に良かったのが、キャロルが子供たちをはじめいろんな人たちに宛てて書いた手紙からの抜粋が随所にちりばめられていたこと。これがまた面白いんですよ!キャロルが大学の講義を受け持ったことについて、学生と教授の立場について書いたものとか、ショートコントみたいです。こんな手紙をもらったら、思わずとっておきたくなってしまうでしょうね。…そういえば、「ピーター・ラビットのおはなし」も、作者のビアトリクス・ポターが病気の男の子への手紙の一部として書いたのが初めじゃなかったでしたっけ?子供へ向けて語りかける手紙って、名作が生まれる最高のツールなのかも知れませんね。今だったらどうだろう。電子メールじゃ何だか「ピーターラビット」や「アリス」のような名作は生まれないような気がするんですが…(笑)(2004.10.31)


「ブリット-マリはただいま幸せ」(著:アストリッド・リンドグレーン/訳:石井登志子/発行:徳間書店)
 リンドグレーンのデビュー作だそうです。そうか、リンドグレーンにも初めての作品というものがあったんだなあ…と妙な感心をしてしまいました(笑)。内容はスウェーデンの小さな町に住む15歳の少女ブリット-マリが、母親の古いタイプライターをゆずってもらったのをきっかけに、大都会ストックホルムに住むペンフレンドに綴り送った手紙、という体裁をとっています。これだけなら少女小説によくあるパターンなんだけど、共働きの両親、両親にかわって家事をとりしきる長女、ブリット-マリといいコンビの弟妹たちが面白おかしく描かれていて、するする読めてしまいます。ブリット-マリの恋愛が中心になる後半よりも、家族や学校生活を描いた前半のほうが彩り豊かで面白かったような気がしますが、終わり方は好きでしたな。(2008.4.6)


「ベビーシッターはアヒル!?」(作:岡田貴久子/発行:ポプラ社)
 題名のすっとんきょうさ(笑)と、ポップな装丁に惹かれて読んでみたら…まさかクリスマスの話だったとは(苦笑)。なんとなく、クリスマスの話を真夏に読むと魅力が半減すると思うのは私だけでしょうか…というのはさておき、それでも十分面白かったです♪
 こんな高性能子守りロボットが実在したら現実ではすごいニュースになると思うんだけど、それが全然問題にされていない社会設定のふてぶてしさが好き。登場人物もみんなマイペースで魅力があるし(日記を先取りして書くお姉さんとか。ちょっと切ないけど前向きな切なさだ)、腕は立つけど口うるさい、何より赤ん坊に首ったけなアヒル型子守りロボットのハナさんが可愛い。なにかユニークで視点が面白い話が読みたいよー、という時に良いかも。
 ちなみにこのタイトルを見た時、「フレッドウォード氏のアヒル」(作:牛島慶子/発行:角川書店〈全9巻〉)というマンガを思い出していたんですが、ロボットと生き物という違いはあっても、やっぱり性格は似ている気がしました。…アヒルって、世話焼き母さんのイメージなのかなあ(笑)。(2002.8.10)


「法隆寺 建立の謎」(著:高田良信/発行:春秋社)
小説ではなく、ドキュメンタリーです。法隆寺の副住職さん(当時)が、自身で発見した江戸時代の古文書や法隆寺と藤ノ木古墳の関係から、藤ノ木古墳の被葬者を推理するというもの。
「最初に結果ありき」な内容だし、研究書というにはちょっと私情が入り過ぎる感があるので、がちがちな考古学研究書を期待すると肩透かしをくらいますが、「こんな意見もあるのね」って感じで入門書として読むにはいいかもしれません。(2005.9.27)


「ポケットのジェーン(原題:Impunity Jane)」(著:ルーマー・ゴッデン/訳:久慈美貴/発行:福武書店)
 これは驚いた。とにかく冒険に憧れている小さな女の子の人形が、わんぱくな男の子に出会って友情を 深めていくお話なんです。ずっと人形の家に閉じこめられて(本来、そのために作られた人形だから 仕方がないのですが)自由と冒険に憧れていた人形が、自分を連れだしてくれた男の子を慕う気持ちが 切なくて可愛かったです。人形を持って歩いて、他の友達に「女みたい」って言われたらどうしよう、って心配する男の子もね♪(2001.11.16)


「魔女の死んだ家」(著:篠田真由美/発行:講談社〔ミステリーランド〕)
あまり期待していなかったのが良かったのか、なかなか面白かったです。最後の謎解きのどんでん返しっぷりと、解かれないまま終わる謎の具合が絶妙でした。

実は篠田さんの一番の人気作(であるらしい)「建築探偵桜井京介シリーズ」を以前に2作ほど読んだことがあるのですが、それはどうも好みに合わなかったんでちょっと不安だったんです。でもこの作品は若干低年齢向けを意識して書かれているのか、シリーズ作品で私が感じた回りくどさをあまり感じず、かつ文章に漂う耽美の香り、古い屋敷の埃くささや香水の残り香、簡単につかめそうでつかめない謎の真相の危うさ、そんなものがくどくない程度に味わえる佳品に仕上がっていると思いました。

…と偉そうに書いちゃったけど、実は「建築探偵」シリーズも良い作品だったのかも知れない、当時の私が受け付けなかっただけで、今は実は好みだということも有り得る…。ん?そう思わせてくれたこの作品って結構すごいのかも。「建築探偵」シリーズ、もっかい挑戦してみようかなー…。 (2004.5.25)


「街の灯」(著:北村 薫/発行:文藝春秋〔本格ミステリー・マスターズ〕)
 ミステリー好きならご存知であろう「このミステリーがすごい!」というミステリー年鑑(?)雑誌であらすじを読んで、面白そうだったので読んでみた作品です。この本の前に読んだ「透明人間の納屋」がすごく暗くて重かったこともあって、どこか非日常的な、さわやかなものが読みたいなあと思って読んだんですが、アタリでした♪まさにそんなミステリでした。
 時代は昭和初期。主人公は士族出身の社長令嬢、花村英子。まだ十四、五の彼女は良い育ちのお嬢様らしく鷹揚なところがありますが、好奇心が旺盛で聡明な、好感のもてる少女です。彼女の家に新しい運転手としてやってきたのが、なんと二十歳くらいの若い女性。ちょうど「虚栄の市」という小説を読んでいたところだった英子は、彼女の「べっく」という苗字に小説の主人公「ベッキー」を連想し、彼女を「ベッキーさん」と呼ぶようになります。

 謎を見付けるのはいつも英子なのですが、常に「ベッキーさん」がその推理の手助けをし、ある時は真実への水先案内ともなります。まだ人生の疲れを知らない若い英子と、どういう過去を経てきたのか剣も銃も扱えるベッキーさん、立場の違うふたりが姉妹のように協力しあって謎を解いていくところが軽快で暖かくて、殺人だのなんだのと生臭いテーマなのに読後感がとてもさわやか。文章も会話が多いせいか読みやすく、ハードカバーが苦手な中高生でもこれなら読めるんじゃないかな、と思いました。いかにも続きが出そうな雰囲気だし、オビにも「新シリーズ誕生!」とあるので多分続きがあるんでしょうね。楽しみです!
 できることなら映像化もしてほしいなあ。きれいどころが二人も主人公だもん、見ごたえあると思うんだけど(笑) (2004.7.6)


「マツの木の王子」<原題:the Pine Prince and the Silver Birch>(著:キャロル・ジェイムズ/訳:猪熊葉子/発行:フェリシモ出版)
マツの木が治めるマツの木の林で出会い、恋に落ちたマツの木の王子とシラカバの少女。恋に落ちたがゆえに切り倒され、木材となって共に売られ、姿を変えてさすらいながらも、「ふたりで一緒にいることが一番だいじ」と愛をつらぬく姿がとても美しく、少し切ない恋物語です。
 「木」が主人公の物語って初めて読んだので、展開がどうなるのかまったく想像がつかなくて、シンプルな物語にも関わらず読んでいてドキドキしました。なんと行っても自分の力でどこへも動くことのできない「木」の物語なわけですから。
 ふたりはそんな不自由にも関わらず、そして互いに深く愛し合っていながらも、『自分達だけが良ければいい』とは決して考えません。どんな境遇にも関わらず、常に周りにも愛情をかたむけます。神秘的なラストシーンといい、「気高い愛」とはこういうものかと思わされる物語です。(2002.10.20)


「マハーバーラタ戦記」(編著:マーガレット・シンプソン/訳:菜畑めぶき/発行:PHP研究所)
 ざざっと斜め読み。インドの古代叙事詩「マハーバーラタ」は数年前に三一書房刊行の全訳版を読んだのですが、これはあの長〜い物語のあらすじと、思想解説と、有名なシーンの抜書きで構成した編集版です。しかもインド→日本へと直接訳されたのではなく、一度イギリス人作家の手によってまとめられたものの翻訳版なので、かなり欧米視点でまとめられていて、ある意味すごく「目から鱗」な作品でした。
 というのも、三一書房の全訳版では、パーンダヴァことかの五人兄弟&クリシュナ、バララーマが完全に主人公で彼らの正義を正義として書かれている(ま、それがもともとの思想だったのでしょうが)のですが、この本を読むと、クリシュナがなんだか説教くさくて融通のきかないオッサンに見えてしまう(笑)。そのくらい違うのです。
 それどころか敵方、特にカルナが、読んでいるうちにどんどん可哀想になってしまう…!母親の落ち度のためにしなくてもいい苦労をして、いくら知らないとはいえ同じ母親の腹から生まれた弟に見下され、そんな時に手を差し伸べてくれた人(ドゥルヨーダナ)に恩を受けて、彼らが正義でないとはいえその時の恩を返すために味方になって何が悪いの!?……という気になってしまうのです。びっくり(笑)。三一書房版で読んだ時は、カルナなんて頭の悪い敵方の一味、くらいの認識しかなかったのになあ(笑)
 ひょっとしてこの訳したシンプソン女史がカルナに肩入れしちゃったんでしょうか(話を作るな)この本の主人公はカルナです。パーンダヴァはただの舞台回しじゃ。(いや、そこまで言わなくても)(2003.2.17)


「マレー鉄道の謎」(著:有栖川有栖/発行:)
「虹果て村の秘密」が面白かったので、久しぶりに手に取ってみました。「ロシア紅茶の謎」など、国の名前をタイトルに取り入れた「国名シリーズ」の第何弾か。(覚えてないし)この前に出された同シリーズの本までは、発行後すぐに読んでたんですけどね…。
確か、他の国名シリーズでは、たとえ外国名がタイトルにつこうと舞台は日本国内だった…ような気がする…のですが、この「マレー鉄道の謎」はタイトル通り、マレーシアでの事件。それも、短編集ではなく。表題作品である長編のみという、このシリーズにしては(私にとって)新鮮な構成でした。

久々に読む長編ミステリ。最初のうちはだらだら読みしてましたが、半分過ぎたところで謎ときが面白くなってさくさく読んでしまいました。文中に出てくるマレーシア料理がおいしそうで〜。よだれ出そうでした(笑)。ああ、食べたい…。
昆虫ファンにはメッカな森とかって、本当にあるんでしょうか。今まで聞いたことのない観光スポットだったんですけど。

密室もので、長編のわりには登場人物が少なめ(だと思う)、個性がたってて読みやすかったです。最後のオチがちょっとあっさりしすぎてたかな?とも思いますが、有栖川作品のクライマックスっていうのは、犯人が分かる瞬間 ではなく、謎が解ける瞬間 らしいので…犯人が事件を起こした理由とか、実はあまり記憶に残ってなかったり。←普通はそこがクライマックスのはずなのにね…(苦笑)。
最期のオチも良くて、面白かった。「火村がそんなに気にしてる仕事って?!」と読者を最後まで引っ張ってくれました。…そうか、オチが良かったから好印象なのか(苦笑)。

そして新しい発見。私はどうやら、登場人物は日本語名のほうが覚えやすいくせに、地名はカタカナのほうが覚えやすいみたいです。振り仮名がつかないと読めないような漢字の地名よりは、そっちのほうがいいみたい…意外だ。(2004.10.24)


「弥勒の月」(著:あさのあつこ/発行:光文社)
 「バッテリー」等で著名なあさのあつこさんの時代小説。どうもこの方の現代小説(バッテリーとか)に入り込めなくて(単に野球がそんなに好きじゃないからかもしれませんが)、それでも物語づくりが上手そうな作家だし、時代小説ならと意気込んで読んでみたのですが。
 なんというか…いい話なんですけど…「帯に短したすきに長し」…という感じ?
 伊佐治とおふじの夫婦愛はほのぼのとしていて良かったんですが。
 なんか、「闇のもの」が出てきてから冷めてしまった感があります。終わり方とかテーマとかは嫌いじゃないんですが、いかんせんこの手のネタは読み飽き(以下略)。こういうネタはネタでなくテクニックを効かせないと入りこめな(以下略)。
 人間、ぜいたくになるもんです…。orz(2009.8.19)


「模倣犯」(著:宮部みゆき/発行:小学館)
かなり重くて、切ない社会派小説…ですが、同著者の前作「理由」に比べるとやや事件性が高いような気がします。登場人物は多いですが、誰が主人公かと言われれば、やはり「少年とおじいちゃん」かな(^^;…それにしても、意図的な効果なのかも知れませんが、善良な一市民がどんどん不幸になっていく話なので、読んでいてかなり辛かったですねー。うん。(2001.4.18)


「8つの物語〜思い出の子どもたち〜(原題:the rope and other srories)」(著:フィリッパ・ピアス/訳:片岡しのぶ/発行:あすなろ書房)
 フィリッパ・ピアスの短編集。表題どおり8つの短編が収められています。この表題、シンプルで良いですねえ…ピアスだからこそつけられる邦題かも知れませんな。新人だったらこんな地味なタイトルでは無理でしょう(笑)。そして「○○と△△」なんていう昨今流行の邦題をつけられるのだわ…。
 …話がそれました(^^;。元に戻して、と。
 どの作品も「ああ、ピアスだな(…と言える程ピアス作品を読み込んでるわけではありませんが/汗)」…と思える繊細な感覚がつまっていました。一番泣けた「ナツメグ」(切なかった…)、共感しつつ読んだ「まつぼっくり」と「巣守りたまご」、愉快な「スポット」、"ああ、『トムと真夜中の庭で』を書いた方の作品だな"と思わずニヤリとしてしまう「チェンバレン夫人の里帰り」、しみじみと幸せな「目をつぶって」などなど…。…と、ここまで書いて気づいたんですが、これらの作品に通じるのは「形にならないものの大切さ」なんですね。…ピアスは夢想を悪いことだとしていない。他人から見たらずれていても、自分にとって大事なことは確かに大事なことだ、と言っている(ような気がする)。物でも、幽霊でも、誰にとって価値がなくても、それは自分にとって確かなことだ、と思ってはじめて、「まつぼっくり」のチャーリーのように、周りの人々の優しさに気づいたり、周りの人に優しくしたりできるんでしょうな…。
 しかしこの「まつぼっくり」も「ナツメグ」も2000年の作品なんですわ。…80歳でこういう物語が書けちゃうのか。…す、凄い…。(2002.7.4)


「ゆうえんちのわたあめちゃん(原題:Candy Floss)」(著:ルーマー・ゴッデン/訳:久慈美貴/発行:福武書店)
 遊園地やお祭りで、ゲームの出店がよくありますね。この人形「わたあめちゃん」は、その出店を しているご主人のジャックと、犬のココと、オルゴールの上にある作り物の馬のナッツと、4人で 旅をしながら仲良く幸せに暮らしている人形です。他の人形と違い、不遇な立場から幸せをつかむのでは なく、既に幸せな人形が事件に遭うお話で、かなりシビアなテーマだと思いました。

 しかしこうして書くと、さすが「人形の家」を書いたゴッデンというか…人形は女の子の人形 なんですが、それを持つ人間は必ずしも女の子ではない。この作品に至っては大人の男の人ですし。人形は 単なる遊び道具ではなく、それを持つ人の心の鏡であり、お守りであり、時には生きるよすがでも あるんです。そういう人にとって、一生に出会う人形はひとつで十分なんですね。(2001.11.16)


「ラン」(著:森絵都/発行:理論社)
 事前情報としては、ただ「ランナーの話」とだけ聞いていたので、冒頭はちょっとめんくらいました。走るは走るでも自転車だし、いきなりファンタジー調のあの世とか死んだ人ととかの交流があるので。
 でも、主人公が本当に走りはじめる100ページ強の所から、物語も走り始める感じがしますね。一人称で書かれているせいかな。主人公が停滞している時は物語も停滞して、主人公が走り始めると、物語も走るんです。ひとりだけの、いわばエゴイストな目標だった「走る」ことが、主人公がずっと固く閉じていた「外」の世界への扉をバンバン開けていくきっかけになる所が、すがすがしい。森さんの他の作品と比べると、いくぶん暗めの作品かも知れませんが、やはり森さんの作品だなあ、と思えました。最後はやっぱり泣けましたね。
 マラソンができる人が、ちょっとうらやましくなりました。これから、フルマラソンを見る目が少し、変わりそうです。(2008.10.21)


「リューンノールの庭」(著:松本祐子/発行:小峰書店)
 一筋縄じゃいかない叔母さんと対等にやりあううちに、それまで無意識に親や祖母に圧迫されてきた少女が自分を取り戻し、たくましくなる物語。
 この叔母さんのキャラクターが良いです。考えてみれば「年上の血縁の女性の家の魔女(?)修行」なんて使い古された材料かもしれないけど、それにまったく違った味付けをしているところが好ましく感じた作品でした。(2003.1.30)


「RDG レッドデータガール はじめてのお使い」(著:荻原規子/発行:角川書店)
 荻原さんの新シリーズ1作目。タイトルの意味は読み終わってから分かります(そしてその風刺に笑えます)。
 主人公は、祖父が営む山の上の神社で育った少女、泉水子(いずみこ)。車の送迎がないと学校にも通えない所に住んでいるため、友達らしい友達づきあいも出来ない泉水子は、周りから変わり者扱いされることに悩んでいます。まずは自分で少しずつ変わらなければ、と自分で前髪を切ったその日から、次第に周りで変なことがおき始めて…という話。
 泉水子の感性がいたってまっとうな現代の女の子なので、自然に物語についていけました。そのあたりを、とても丁寧に書いている感じです。これから泉水子も自覚して、次第にファンタジー色が強くなってくるようですが、この泉水子のまっとうなモラルというか、感性を続けて持っていて欲しいなあと思います。それがなくなったら、言いたかないが、また勾玉と比較さ…(もがもが)
 …いえ、勾玉シリーズとはかすらない日本神話とのつながりになるようです。というか、勾玉シリーズでは「書けなかった」日本の伝説とのつながりになるのかな?そうだったらいいな!(2008.11.21)


「ローワンと魔法の地図(原題:Rowan of Rin)」(著:エミリー・ロッダ/訳:さくまゆみこ/発行:あすなろ書房)
 何と言いますか、昨今流行りの「RPG形式ファンタジー小説」ってこんな感じ?  …と言うような物語でした。(褒めてます)
 面白かったです。アニメーション映画にもなりそうな感じ。でも、謎を解いていく、という点で推理ものっぽい所があるので、一読すると2度目は…読むかな? という気もします。ネタが割れているので、一番はじめに読んだ時よりは興奮度が下がるんですよね。好きなシーンだけ拾い読み! という風になってしまいます、どうしても。
 でも、ローワン本人が持つテーマもさながら、周りの大人たちの描かれ方が緻密で良いと思いました。男女ともに強さあり、弱さがある所が丁寧に描かれていると思います。というか、それがテーマなのか。
 「ネシャン・サーガ」等の装丁も手がけている、佐竹美保さんの挿画が味わい深くてステキです!(2001.11.19)


「ローワンと黄金の谷の謎(原題:Rowan and the Travellers)(著:エミリー・ロッダ/訳:さくまゆみこ/発行:あすなろ書房)
 実は「魔法の地図」の後にすぐ読み終わってましたが(^^;次の話です。
 前巻の冒険で少し成長した…というか、少なくとも「自分の弱さを欠点ではなく、ある種の特性として認められるようになった」ローワン(相変わらず虚弱)のお話。今回は、財を持たず土地から土地へと渡り歩く一族「旅の人」がリンの谷にやってきて、ひとつの土地で財を蓄積することに価値を置くリンの谷の人々が、彼らとの価値観の違いを見つめる事になります。
 価値観の違いから生まれる恐れ、疑惑、憧れ、そして冒険。最後まで事件の元凶が何なのか分からなくて、種明かしにはびっくりしました。前巻のイメージを引きずって読んでいると完全に「してやられ」ますね(笑)。
 リンの谷と「旅の人」、両者の敵であるらしい「ゼバック」という一族が、いったいどんな脅威を持つ敵なのか今ひとつはっきりしないので、リンの谷の人たちが抱く恐れが今ひとつ理解しにくいのが難と言えば難。まあ、今後への伏線なんでしょうが。
 個人的に今回初登場の「旅の人」の少女ジールが次回以降も登場する事に期待!(2001.11.28)


「ローワンと伝説の水晶(原題:Rowan and The Keeper of the Crystal)」(著:エミリー・ロッダ/訳:さくまゆみこ/発行:あすなろ書房)
 「ローワン」シリーズ第3巻です。確か訳者さんはこの3巻を最初に読んで惚れたと後書きか何かで読んだので、楽しみにしていました。読了直後の感想は…素直に「面白かった」です。そして、良く出来ています。ハリー・ポッターやネシャン・サーガと違い、このシリーズは(少なくとも3巻までは)本当に「どの巻から読んでも」内容が分かります。それだけ、内容が独立しています。
 それと同時に、1巻から読んでいる人には、1巻で「リンの谷とその中に暮らす人々」を描き、2巻で「そこにやってくる来訪者」を描き、3巻で今度は「こちらから他の場所を尋ねる(=自分が来訪者となる)」物語として、だんだんとこのシリーズの世界が内側から外へ広がっていく感覚がつかめると思います。正直、どうやら真の悪役?であるらしい、侵略者の一族「ゼバック」が3巻あたりでそろそろ本格的に描かれるかな? と思っていたので、今回もゼバックが脇役どまりだったのには驚きましたが。
 試練があり、呪文とアイテム(笑)があり、それを解いていってようやく終わりか!という所で真のラスボス(大笑)が現れる、というパターンは本当にゲーム的なので、日頃ゲームに親しんでいる男の子とかが読むと、面白いかもしれません。
 しかし大人が読むと、こういうパターンは正直、物足りない(苦笑)。3巻はそれを意識してか、情景描写や人物描写、そしてローワンの心理描写をとても丁寧にしてありますが…やはり、そろそろゼバックがなぜ悪役なのか、そのあたりを知りたいですね。ゼバックといえど人間、彼らにも正義があって侵略を続けていると思うんですが…彼らの背景、本当に何も語られていないですよね。それともやはりこれも伏線なんでしょうか(笑)。各巻の名脇役たちも…出てきて欲しいです(ジール、出てこなかった…/泣)(2002.2.25)


「ローワンとゼバックの黒い影(原題:Rowan and The Zebak)」(著:エミリー・ロッダ/訳:さくまゆみこ/発行:あすなろ書房)
 「ローワン」シリーズ第4巻。ジール再登場!!
そしてとうとう出ました、ゼバック。やっぱり3巻までが伏線でしたか。なるほど、ジールだけでなく、水と海の民であるマリスも物語に必要不可欠な存在だったんですね。納得しました。

 物語は、私が3巻が出た時に「読みたい」と思った物語にかなり近づいています。なにより、ローワンが自分自身に自分らしさを問い始めたところが良かった。前3作での活躍はそれまで村人に馬鹿にされていたローワンを別の方向に押し出しただけで、ローワンの本当の望みはかなえられていないこと、そして、今回のローワンの見せ場がとっさの機転や追い詰められてのことではなく、いつもの「バクシャー係のローワン」によってなされるところがとても良かったと思います。たぶんこの4巻も次への伏線なんだろうなあという事が分かってきたので(笑)、今回は「物足りないぞー」とうなりながら読むようなことはありませんでした。小気味良く、一気に読める面白さはいつものこと。(^^)(2003.1.11)


「ローワンと白い魔物(原題:Rowan of The Bukshah)」(著:エミリー・ロッダ/訳:さくまゆみこ/発行:あすなろ書房)
 「ローワン」5冊目です。1巻を導入編として2巻から5巻にかけて外の世界へと向いていたローワンとリンの谷の住民たちの視線が、再びリンの谷そのものに向けられています。と、なると、1巻と似たようなものになるか?と思いきや、(確かにちょっとそう思わせる所もないではないけど)、1巻の相手が「火」だったのに対し今回は「雪」であり「氷」で、コントラストをなしています。それは原題を見ても分かることで、2巻から5巻までは「Rowan and〜」というタイトルなのに対し、1巻と、この5巻だけが「Rowan of 〜」というタイトルです。それに今回のタイトルは直訳すれば「バクシャー係のローワン」。ローワンが原点に還る物語であることを示しています。

 ローワン自身にも若干変化が見られます。基本的なものは一緒だけど、村人から畏敬の目で見られるようになったことを居心地悪く感じるところや、村の長老的存在であるランに意見を言えるほどには成長しています。

 このシリーズって、目立つほど派手ではないし、文章も平易で読みやすいんですけど、常に読み手をあなどらずに細かいところまで気を配っている雰囲気があって、感じが良いです。新刊が出ると「一刻も早く読みたい!」と言う程ではないんですが、「いつか読もう」とチェックしておきたくなりますね(^_^)。  (2004.3.14)