キングダム・オブ・ヘブン
Kingdom of Heaven
 
 

  

2005年アメリカ/監督:リドリー・スコット
出演:オーランド・ブルーム エヴァ・グリーン リーアム・ニーセン
リドリー・スコットって、「グラディエーター」を作った監督ですよね。「グラディエーター」は細切れに見て、容赦ない(映画の) 作り方をする人だなあ(※褒め言葉です)と思っていたので、どんなもんかなあ、グロかったらどうしよう、と見る前はちょっと 不安だったのですが、見終わってみたら、意外やとても良い映画でした。戦争シーンとかはきっちりリアルだったのにも関わらず。

多分この後味の良さは、キリスト教側とイスラム教側がつとめて公平に描かれていることと、両者の相互理解と平和を維持しようと する人々の物語であることから来ていると思います。平和を望みながら争いを免れず巻き込まれていく人の物語は、見ていて辛い所が たくさんあったけれど、全体を通じて作り手の切ないほどの平和への祈りを感じました。
また、この映画には(主にイラク戦争に対する)現代風刺がたっぷり入っているのですが、直接的でない比喩もたくさんあるので、 何をどう取るかというのは人によって違うと思います。実際、私がある解釈をしたシーンで、別の人がまったく違う解釈をしていましたし。

だから、私がこの映画を「いい映画」というのは、この映画が発しているメッセージだとか雰囲気だとかが、私が「善し」としている 思考回路に組み込めるものだった、というだけのことです。ある岐路に立たされて、どちらにも正義とリスクがある場合、周りに流されずに 自分の良心に従って判断を下すこと。信仰と良心のスタンス。命よりも大事なもののために命を捨てることと、それが何の意味もないことを 同じ重さで理解していること。困難の時こそ己の義務にベストを尽くすこと。

これは先日読んだ林望さんの「イギリスは愉快だ」に書かれていたイギリス人の勇気のあり方に通じるものがありますね。この主人公は フランス人という設定だけど、主役の俳優がイギリス人だからそういうふうに感じちゃったのかな(笑)。でも、頑固でしたよね、 あの主人公。

ただ、十字軍の物語ってことで、ある程度十字軍だとかキリスト教のことを知らないと理解しにくい点はあるかも知れません。 でも私の知識は、子どもの頃に読んだ児童小説「獅子王リチャード」と聖書、映画のパンフレットにあった人物関係図だけでしたけどね(笑)。

この映画はかなりカットされた部分があるそうです。前半の、バリアンがエルサレムにたどりつくまでの過程なんかは明らかに唐突で短縮された 感じがします。完全版DVDが出たらぜひ確認してみたいものです。