シェーラとタウラの伝説
〜ドーム郡の創始〜



「あそこに、三つの星がならんでいるだろう。そのまわりを、四つの星が、かこんでいるな。
あの、四つの星を、『シェーラの冠』というんだよ」
「三つの、まっすぐにならんだ星は?」
「タウラの剣」(本文P235より)


シェーラとタウラは、ドーム郡の創始にまつわる伝説上の登場人物です。

その昔、歌や踊りで生活しながら、土地から土地へ旅を続ける人々がいました。
彼らは自分たちのことを「さすらい人」と呼び、
何より自由な心と、歌と踊りを愛していました。

シェーラと呼ばれる少女と、タウラと呼ばれる少年が、
いつから彼らの仲間に加わったのか、
それは定かではありません。
ですが、二人は、さすらい人達の中でも、
その高貴な魂と、優れた歌と踊りで、異彩を放っていたといいます。

ある時、彼らが当時の首都であるアイザールにやってきた時、
時の王フラバがシェーラのたぐいまれな歌と踊りを見そめました。
王はシェーラをとらえ、王宮にとじこめ、自分だけのために歌い踊るよう命じました。
ですが、シェーラは従いませんでした。

「わたしの心はさすらい人の心。
どんな王だって、わたしに無理じいしておどらせることも、
うたわせることもできません!」(P231)

怒り狂った王は、踊らなければ彼女の仲間を皆殺しにすると、彼女を脅します。
シェーラは考えた末、彼女の伴奏をするタウラを呼んでくれれば、
歌い踊ることを承知します。

タウラは、仲間のさすらい人をひそかに逃がすと、ひとり、王宮へやってきます。
タウラの伴奏に乗せて、舞い踊るシェーラ。
その美しさに並み居る人々が酔いしれた頃。

「ウラ・リーク・ヌバ・アイザール!(われらこそ、アイザールの王!)」(P233)

われに返った人々の目に映ったのは、
タウラが隠し持っていた剣によって息絶えた王でした。
何が起こったのかを瞬時に悟った兵士たちによって、二人に降り注ぐ矢。
互いに抱きしめ合う暇もなく、二人は全身を矢に貫かれて息絶えます。

シェーラとタウラを後に逃げのびたさすらい人たちにも、追っ手は差し向けられました。
ある者は殺され、ある者は道を別にして逃げのび、
とうとう、山の壁を越えた果てに人々が見いだした、平和な安住の地。
そこが、今のドーム郡だといわれています。




(※注…文中 斜体 は本文より)