さかい ともみ/作 青空風太郎/絵
銀の鈴社/出版


ロザリオの祈り T
〜長崎の原爆を生きぬいて〜
〔ジュニアノンフィクション9〕

医者の父、優しい母と兄に囲まれ、戦時下とはいえ幸せに暮らしていた幼女、"かやの"。
だが、日に日に厳しくなっていく戦局に、かやのは近くの村へ一時疎開に行くことになる。
でも、きっとすぐに家に帰れる…それを楽しみに、長崎の街へ続く坂に母の姿を待つかやの。
なのに『あの日』、かやのが見たのは長崎の街の上に走った閃光だった…。

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『長崎の鐘』等の著者、永井隆博士の娘、茅乃さんの視点から描いた原爆の物語。
特に印象的だったのは、「家族四人で食べようね」と母がとっておいた桃の缶詰めを、原爆後に父が子供たちに 開けて出した時、「お母さんがいないよ、お母さんが来るまで待ってる」とかやのが言う所です。母が自分を 迎えに来るためにのぼってくるはずだった坂を、じっと待っている幼子の背中…。
そして荒れ果てた長崎で始まる生活。原爆症で倒れ、それでも「自分が死ねば子供たちは本当に孤児になって しまう」と懸命に死と闘う父。("あの日"以来、かやのは「お母さん」と呼ばなくなった――それは、 呼んでも「はあい」と返事をしてくれる人がいないからだ…。)
永井博士の著書の中でも語られていることを、幼子の視点を生かして描くことでより具体的に、理解しやすく 描いています。



ロザリオの祈り U
〜少女にのこした原爆のつめあと〜
〔ジュニアノンフィクション10〕

戦時下の長崎で青春の真っ只中にいた女学校の女生徒たち。
同じ学び舎で、同じように未来を模索していた彼女たちの上で光った一発の原爆が、
その後の彼女たちの未来を決定的に変えてしまった…。

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女学校の教師、高木先生と二人の女生徒、美恵子と幸子。
この三人のそれぞれの視点から、それぞれの「原爆」とそれによって分かたれてしまった半生を 描いています。その中でも、傷ついた米兵に持っていた薬を求められた美恵子の選択や、 原爆孤児となったがために味わった辛く厳しい経験から幸子が選んだ人生は、印象的なものでした。
なんというか…原爆の話ですが、女性的な優しさやふくよかさに満ちた一作です。



ロザリオの祈り V
〜原爆を受けた少年が見つけた愛の道〜
〔ジュニアノンフィクション11〕

少年の名は小崎登明(とうめい)。彼は優しい母と暮らしていたが、一発の原爆がそれまでの少年の生活の 全てを奪ってしまう。友を見殺しにした自責、母を失った悲しみ…原子荒野をさまよった末に修道院の門を叩く少年。 そこで彼は、アウシュビッツで見知らぬ人の身代わりとなって死んだコルベ神父のことを知り、衝撃を受ける。 「なぜ、他人のために死ぬなんてことができるのか…」原爆の地獄絵図を見た少年が見つけた、真実の勇気とは。
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これも実在の人物をモデルにした物語。モデルとなった小崎さんは今でも長崎の「聖母の騎士修道院」にいらっしゃいます。
私はこの本で始めてコルベ神父の存在を知り、その後伝記などを読むに至りました。数年前に長崎を訪問した際、「聖母の騎士 修道院」を尋ねて小崎さんの著書をいくつか購入。通りすがりのご本人とも少しお話をしました…(緊張しました…!)。
三部作の中では唯一少年が主人公ということ、他よりやや重いテーマになっているため再読回数は他の2冊よりは少なかったのですが、 その後の私の人生に最も影響を与えたのは実はこの本かもしれません。