ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(Diana Wynne Jones)/作
西村醇子/訳 徳間書店/出版

空中の城1
魔法使いハウルと火の悪魔
(原題 Howl's Moving Castle)
 魔法がお伽話が当たり前に常識として存在する国、インガリー。帽子屋の18歳の娘ソフィーは、 自分がお伽話のセオリー通り、何をやっても出世する見込みなどない長女だと強く思いこみ、 自分の人生を諦観していました。ところがある日、彼女は店を訪れた”荒地の魔女”に魔法をかけられ、 老婆の姿に変えられてしまいます。しかも、相手からその魔法を見破られない限りは、魔法をかけられた 事を言うことができない、というおまけつきで。家を出たソフィーは悪名高い魔法使いハウルが住む 空中の城に押し掛け、掃除婦として居座ろうとしますが……
ソフィー・ハッターは三人姉妹の長女でした。せめて貧しいきこりの子なら、少しは出世の望みも あったでしょうが、あいにくそうではありません』(本文より)……1ページ目のこの文章に大笑い。 言われてみれば、「シンデレラ」も「長靴をはいた猫」の主人公も三人兄弟の末っ子なのね。長女は 何をやっても失敗し、末っ子は放っておいても出世すると固く信じているソフィーですが、彼女自身は そんな枠に収まらない激しい気性と徹底した性格の持ち主。ずばぬけた行動力でトラブルを引き込んでは 「やっぱりあたしは長女だから!」といじける所がかなり可愛いぞ(笑)。
 そして何よりハウル!あんたおかしすぎ!毎日のように髪を染め、2時間かけて風呂に入り、 スパンコールをぎっしり散りばめた銀や赤の派手な服を着込んで女性を口説くのが生き甲斐の魔法使いって …(笑)。とにかく会話が面白い。人物が何をしでかすか、魔法の展開がどうなるか。拍子木打って あおりたくなる、スリリングな面白さです(^^)。


空中の城2
アブダラと空飛ぶ絨毯
(原題 Castle in the Air)
 インガリーよりはるか南のラシュプート国。バザールで絨毯商を営んでいた青年アブダラは、ある日 不審な男から空飛ぶ絨毯を買い取ります。その夜、絨毯の上で寝ていたアブダラは夢の中で美しい庭へ 行き、そこで美しい女性<夜咲花(よるさくはな)>と出会い、恋に落ちます。ところがそれは夢では なく現実で、アブダラは彼女と駆け落ちしようとしますが、その直前に彼女は魔人(ジン)に さらわれ、アブダラは彼女を隠した疑いで国を逃げる羽目に陥ります。彼女はいったいどこへさらわれて しまったのか…彼女を救い出すため、空飛ぶ絨毯ひとつを共に旅に出たアブダラに、度重なる 災難が訪れ…
 「なんだー、ハウルもソフィーも脇役なのか、つまんない〜」と思いつつ読んでいたら… ラスト20ページで「すみません、私の読みが浅はかでした」と思わずイギリスに向かって一礼したく なってしまった(笑)。BGMに「シェエラザード」など流しつつ読んだらなお面白いでしょう♪ アラブ風の雰囲気あふれる作品です。
 ちょっと情けない夢想家のアブダラに、しっかり者で堅実で、でもやっぱり恋する乙女の<夜咲花> のカップルも可愛い。でも絶対尻にしかれるね(笑)。マイケルと、ソフィーの末妹マーサはとうとう 未登場で、そこはちょっと残念だけど、それでも面白かったです。それにしても…う〜ん、作者に 「してやられたな」(笑)。